研究課題/領域番号 |
18K09245
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
和田 美智子 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究員 (80813815)
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研究分担者 |
山口 建 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究員 (20378772) [辞退]
橋本 貢士 獨協医科大学, 医学部, 教授 (30396642)
北 誠 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究員 (50767415)
浅原 哲子 (佐藤哲子) 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究部長 (80373512)
安彦 郁 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究員 (20508246)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 妊娠 / 甲状腺機能 / 潜在性甲状腺機能低下症 / 妊婦 / 分娩 / 出生時体重 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、京都医療センター産科婦人科で妊婦検診及び分娩を行った妊婦を対象に、母体血清、臍帯血血清、胎盤組織、診療情報を系統的集積し、母体妊娠初期血清および臍帯血血清において甲状腺機能検査及び自己抗体の測定を行い、データベース化した。本研究申請時点の見込みより分娩件数が減少したため、登録者を増やす目的で、週数を限定しすぎず、登録症例の週数の幅を考慮し、できる限り多数の妊婦のリクルートを行った。登録者の増加を図り、現在、102例の妊婦の同意、登録が完了している。そのうち、令和2年4月末までで妊娠初期検体は62例、分娩前検体は50例、臍帯血は50例につき甲状腺ホルモンを測定している。令和1年11月までの解析で甲状腺疾患を有する症例は5、例(8.0%)、潜在性甲状腺機能低下症は1例(1.6%)であった。 母体妊娠初期血清および臍帯血血清の甲状腺ホルモンおよび甲状腺刺激ホルモンの平均値、母体の自己抗体の有無について検討し、診療情報から得られるデータ(児の出生時体重等)との関連を検討している。 主な測定結果は、妊娠初期TSH値0.99(±0.89)、fT4値1.315(±0.05)、βhCG値90.65(69.29)、分娩前TSH値2.84(±1.88)、fT4値1.17(±0.15)、臍帯血TSH値7.86(±5.50)、fT4値1.22(±0.25)であった。既報通り、妊娠初期には胎盤由来のhCGの甲状腺刺激作用による甲状腺ホルモンの分泌上昇から、TSH値は低下したと考えられたが、fT4値は正常範囲を逸脱しなかった。また、新生児は生理的にTSH値が上昇するとされ、母体の分娩前と臍帯血において、TSH値やfT4値とを比較した場合、TSH値は臍帯血で有意に高値であったが、fT4値は母体と有意差を認めなかった。現在、さらに症例数を増やし、詳細な診療情報との関連を含めて解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年3月末現在、研究登録者は102名例(昨年度より36例増加)、妊娠初期血清88検体、妊娠中期血清63検体、妊娠後期血清53検体、分娩前母体血清57検体、分娩後臍帯血清57検体、胎盤55検体を採取している。このうち、現在までで診療情報の解析が進んでいる86例について、母体に何らかの甲状腺疾患または甲状腺機能異常合併妊娠は5例(5.8%)あり、内訳は橋本病2例(2.3%)、バセドウ病1例(1.1%)、潜在性甲状腺機能低下症1例(1.1%)、下垂体性甲状腺機能低下症1例(1.1%)であった。令和元年度の登録数及び集計は順調に進んでいる。現在、全登録者について、妊娠初期血清、分娩前血清、臍帯血血清の甲状腺機能検査を行い、診療情報から得られるデータとあわせて検討中である。以上より、本研究では、100例以上の日本人妊婦における妊娠と分娩前後の甲状腺機能を追跡しており、今後、分娩時の内分泌疾患・甲状腺機能異常の割合とその分娩・合併症・児への影響を検討・解析でき、これまでこの様な報告はあまりなく、貴重な報告になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの症例のうち、潜在性甲状腺機能低下症が1例(全例の1.1%)、甲状腺疾患合併症例5例(全例の5.8%)であり、既報より少ない。これは、合併症妊娠は妊娠初期には他院で受診し、中期以後当院を紹介となるため、当初のリクルートを初期から当院に通院している患者としていたために、甲状腺機能異常症例がリクルートされにくい状況であったためと考えられる。更に症例を集積して検討する方針である。 また、全登録症例において、甲状腺機能関連パラメーター(妊娠初期ではfT4, TSH,抗TPO抗体、Tg、hCG、分娩前ではfT4、TSH、臍帯血ではfT4、TSH)と児推定体重、母体の体重(妊娠前、分娩時、産後1か月)、合併症(流産、早産、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病など)との関連含めて、詳細な検討を行い、妊婦の甲状腺機能異常症の合併が妊娠・分娩・母児に与える影響を解明していく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
一時的に、計画より検体収集が遅れたため、すべての検体の検査が済んでいない。 このため、次年度にまとめて検体の検査を行うこととなったため。
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