研究課題
卵巣内での酸化ストレス経路に転写因子Nrf2/Keap1経路およびp53/Mdm2経路が関与することを、これまでにわれわれは卵巣顆粒膜細胞を用いた実験で同定していた。本研究では、これら経路に直接的に作用する低分子化合物が、卵巣老化により生じる病理学的変化、および卵子数の減少に対しどのような影響を及ぼすかを、ヒト卵巣顆粒膜細胞の初代培養系に加えマウスを用いた実験で明らかにすることで、ヒト卵巣老化を救済するための基盤を構築することを目標としていた。2018年度はNrf2機能を亢進させるジメチルフマル酸DMFをマウスに投与し、卵巣における病理学的変化を観察して、以下のような所見を得た。1)DMFを投与されたマウス卵巣には原始卵胞数が増えるつまり卵胞の個数が救済される可能性が示された。2)DMF処理マウスにおいて排卵誘発をおこなうと、対照群と比較して最終的に得られる卵子数が増える3)卵巣における今後の排卵量を推定する指標である抗ミュラー管ホルモン値が対照群より増加していた4)酸化ストレスマーカーであるSOD1, カタラーゼなどの発現が対照群より増加していた。5)DNA損傷の指標になる8-OH-dG発現およびTUNEL染色が対照群より減少していた。6)テロメア長延長酵素であるTERTの発現が対照群より増加していた。2019年度はp53抑制因子Mdm2に着目し、その生理学的能を追求している。ヒト卵巣顆粒膜細胞の初代培養系において酸化ストレス刺激を加えるとMdm2発現が上昇することでその機能が明らかとなった。Mdm2発現を抑制するsiRNAの投与最適化に難渋しており、進捗がはかどっていない。
3: やや遅れている
Nrf2経路の追求は十分達成できたが、Mdm2経路の追求の進捗が遅いため「やや遅れている」と評価している。
卵巣におけるp53抑制因子Mdm2の作用を追求し、経路の意義を明らかにしたい。Mdm2作用を抑制するNutlin-3aという低分子化合物をマウスに投与し、卵巣における病理学的変化を観察する目的とするが、最終年度でもあるので本題以外の予備実験もおこない成果を出したい。
進捗が思わしくない点と研究協力者の都合により若干経費に差額が生じたが、2020年度に順調に消化する予定である。
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すべて 雑誌論文 (18件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 1件、 招待講演 21件)
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