研究課題
【目的】本研究では、卵巣明細胞癌において、DNA修復に重要な働きを有するTP53の活性低下にMDM2高発現が寄与している可能性が高いという仮説のもと、変異率の高いPIK3CA発現の意義およびMDM2阻害とPI3K経路阻害剤の抗腫瘍効果を明らかにすることを研究目的とした。【方法】MDM2, PIK3CAの卵巣明細胞癌臨床検体75例における発現レベルを発現アレイにより解析した。卵巣明細胞癌細胞株を用いて、MDM2阻害剤RG7112およびPI3K/mTOR同時阻害剤DS-7423を添加し、併用療法による抗腫瘍効果を検討した。ヌードマウス皮下移植モデルを用い、この併用療法の効果をin vivoでも検証した。【成績】MDM2とPIK3CAの両方が高発現の群では有意に予後不良であった (P=0.013)。卵巣明細胞癌4株にRG7112およびDS-7423を併用で添加したところ、いずれの細胞株においてもそれぞれ単剤で添加した場合に比べ、有意に細胞増殖が抑制され、細胞死が誘導された。併用療法はヌードマウス皮下移植モデルにおいても単剤に比し、有意に腫瘍増殖を抑制した(OVISE株でP<0.001 , RMG-I株でP=0.038) 。重篤な有害事象は認められなかった。【結論】卵巣明細棒癌において、MDM2およびPI3K/mTORを標的とする新たな分子標的治療法の可能性が示された。特に併用療法で効果が高い可能性がある。TP53をはじめとしたDNA修復経路を標的とした治療法の更なる開発が望まれる。
2: おおむね順調に進展している
予定通りに研究を遂行できており、研究の成果を英語論文として報告した。研究実績の概要で示した論文のほか、DNA修復経路を標的とした治療法として、子宮体癌におけるATR阻害剤、ATM阻害剤についての論文も発表している。DNA修復経路に主眼をおいた分子標的治療法の探索についての知見が重ねて得られており、本研究プロジェクトは順調に進展している状況である。
2019年度までは、卵巣癌においてDNA修復経路に関わる分子標的治療薬の抗腫瘍効果を中心に研究を行ってきた。2020年度は、卵巣癌におけるゲノム解析データをより包括的に収集し、治療への橋渡しにつながるような分子標的治療法の提唱や治療感受性に関わるバイオマーカーの同定といった目標を定め、研究を進めていく予定である。
前年度までの研究費をもとにしたデータ等を活用したため。2020年度の更なる機能解析や分子標的治療法の探索的な研究に使用する計画である。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件) 図書 (5件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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