研究課題
これまでに我々は臨床子宮体癌組織・卵巣がん臨床検体より3次元スフェロイド培養を培養樹立した。卵巣がんの中でも最も頻度の多い高悪性度漿液性がん,ならびに子宮体癌の最も頻度の多い高悪性度類内膜がんについて,これまで研究を遂行していた。(Ueda et al., STAR Protocols 2021)。本研究期間において,アルデヒド脱水素酵素活性(ALDH)を有する子宮体癌細胞(ALDH高活性細胞)ががん幹細胞性質を有していることをを認めた。ALDH阻害剤やALDH発現抑制によりALDH活性を抑制することで,がん幹細胞性質が抑制されたまたALDH高活性細胞は,抗がん剤パクリタキセルに対する低感受性を示した。一方,ALDH過剰発現によるALDH活性の亢進によりがん幹細胞性質が亢進した。ALDH高活性細胞は糖の取り込み亢進に伴う解糖系の亢進を認めた。糖輸送体GLUT1の阻害剤やGLUT1発現抑制により,糖取り込みを抑制することでがん幹細胞性質が抑制された。さらにGLUT1阻害剤は抗がん剤パクリタキセルとの併用により相乗的な腫瘍形成抑制効果を示した。子宮体癌臨床組織検体の免疫染色より,ALDH1A1およびGLUT1項発現群は予後不良であることが明らかになった。以上より,子宮体癌幹細胞の維持にALDHを介した解糖系の亢進メカニズムが明らかになり,ALDH阻害剤・GLUT阻害剤の子宮体癌の新規治療としての有用性の可能性が示された(Mori et al., Stem Cell Rep 2019)。さらに,上記成果に加え,卵巣明細胞がんや子宮体部明細胞がんのスフェロイド細胞を安定培養を行った。これら細胞においても,ALDH活性が重要であることはおおむね共通していたものの,その生物学的特徴は上述の卵巣漿液性癌や子宮体部類内膜がんとは異なっていた。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
STAR Protocols
巻: 2 ページ: 100354
10.1016/j.xpro.2021.100354