未破水切迫早産の主な原因は、子宮内炎症であり、分娩週数が早期であるほど、その程度は重度であるという特徴がある。特に、重度の子宮内炎症の原因は、ウレアプラズマ/マイコプラズマと細菌の重複した子宮内感染であり、適切な抗菌薬を投与することで妊娠期間の延長効果が認められる。これら病原微生物の評価は、当院で開発した偽陽性のない高感度PCR法を使うことで初めて行うことができる。一方で、無菌性の子宮内炎症を有する切迫早産には、治療戦略がなかったが、本研究により、中等度の子宮内炎症(羊水中IL-8値:2.3~17.2ng/mL)を有する切迫早産に対しては、黄体ホルモンを投与することで妊娠期間の有意な延長効果を認め(約4週間)、結果的にlate preterm(34~36週の早産)を有意に減少していたことをはじめて報告した。 また、このような切迫早産に対して、本邦では子宮収縮抑制剤の持続的な点滴治療が行われるが、その有用性は証明されていない。切迫早産の分娩転帰から、34週未満分娩群(児の未熟性からNICU管理が必須)、34~37週分娩群(児の未熟性がおおよそ克服)、38週以降分娩群(点滴治療が過剰に行われている可能性)の3群に分けて評価した場合、34~37週分娩群に対して、黄体ホルモン治療が子宮収縮抑制剤の持続的な点滴治療に代わる治療法になる可能性がある。一方で、38週以降の分娩群は、切迫早産の診断あるいは長期点滴治療の必要性につき見直しが必要であると考えられる。 早産リスク因子として子宮頸管ポリープが知られているが、その具体的な早産率や切除するべきかどうかはわかっていない。当院では、上行性感染のリスクを説明の上、切除していたが、これらの症例を後方視的にまとめると、34週未満の流早産率は21.9%であり、出血を伴っていること、ポリープの径が12mm以上であること、10週までに切除例が、自然流早産の独立したリスク因子であることが判った。
|