研究課題
子宮内膜癌細胞株ではchemokineによる遊走促進作用には反応するもののmicroparticleによる遊走抑制と上皮化促進は誘導されないことを見いだした。これらの知見から「血小板由来のchemokineへの反応性の亢進が子宮内膜癌の浸潤に関与しmicroparticleの上皮化促進作用への反応性の低下が子宮内膜癌病巣の進展に関与する」との発想に至った。正常子宮内膜上皮細胞からh-TERT導入して不死化した細胞株(EM-E6/E7/hTERT)およびこの細胞にK-ras遺伝子を導入して癌化させた細胞株(EM-E6/E7/hTERT/K-ras)を用いて実験を施行した。ヒト血小板はボランティア女性の末梢血から分離しそのまま共培養に供するか、またはcollagen type Iでコートした皿上で血小板を単独で培養し、活性化した血小板からの分泌物を含む培養上清を採取して遠沈後に分離した上澄みを血小板の分離培養上清分画(chemokine分画)として、また遠沈をRPMIに浮遊させたものをmicroparticle分画として実験に供した。まず血小板と遠心分離培養上清の作用差異の検討のため、モデル細胞を培養した後、バスケットchamberを用いて調整した血小板と共培養し、培養液を採取洗浄後にWST-1 assay法にて生細胞数の算定を試みたが、実験系の樹立が困難で、有意な結果が得られなかった。形態の変化をtime-lapse cameraで観察し、F-actin染色によるcortical actin ring形成の有無とE-cadherinおよびリン酸化focal adhesion kinase (pFAK)の発現形態の検討したところ、E-cadherinおよびpFAKの有意な発現上昇が観察された。これらの変化が、子宮内膜癌の表現型に与える影響に関しては結論が得られなかった。