研究課題
子宮内膜癌の8割を占める類内膜癌の30%以上にARID1A遺伝子変異が認められることから、ARID1Aの機能喪失が内膜の癌化や進展に重要な役割を持つと考えられ、増殖能などの悪性度増強や薬剤感受性に影響している可能性が考えられるが、これを検討した報告はない。そこで本研究では、我々の共同研究者が樹立した子宮内膜特異的にArid1aノックアウトを誘導できる遺伝子改変マウスや培養細胞を用いて、ARID1A機能喪失の子宮内膜癌化・進展に及ぼす影響、薬剤感受性に及ぼす影響、それらの分子機序を検討することを目的とする。現在までマウスにおいて子宮内膜特異的にArid1a遺伝子のknock-out(KO)を導入できる遺伝子改変マウスを作成し、狙い通りにKOされることを確認した。その上でArid1a-KO導入による子宮内膜病変の有無を観察している。また、他の遺伝子AのKOや遺伝子B変異が同時に導入される遺伝子改変マウスも作成し、同様に病変の有無を観察中である。また、子宮内膜癌細胞株のARID1Aの蛋白発現とmutationの有無をWestern blottingとsequencingで確認中である。 ARID1A陽性細胞株において、CRISPR法でARID1A-KO細胞を作成中であり、今後の機能解析実験に用いる予定である。さらに、ARID1A野生型の細胞株からARID1A cDNAを増幅し、pcDNA3 plasmidに連結させることでARID1A発現vectorを作成した。これをARID1A欠失細胞株に導入した細胞を作成中である。
3: やや遅れている
遺伝子改変マウスの妊孕性が予想以上に不良であること、BL6マウスへの戻し交配が必要であることから、想定以上に時間を要している。ARID1A-KO細胞やARID1A欠失細胞へのARID1A遺伝子を導入した細胞の作製を進めており、今後の機能解析実験に用いることが可能となる見込みである。
基本的に実験計画に沿って、研究を進めていく。培養細胞を用いた実験では、ARID1A-KOおよびARID1A cDNA導入細胞での機能解析を進めていく。また、子宮内膜腺上皮特異的にArid1a-KOを誘導可能な遺伝子改変マウスでの検討を進める。Arid1a-KOと遺伝子A-KOもしくは遺伝子B変異を同時に誘導するマウスでは、子宮内膜腫瘍の発生が見られており、薬剤感受性などの検討を進める予定である。
すべて 2018
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Gynecologic Oncology
巻: 150 ページ: 426-431
10.1016/j.ygyno.2018.06.025.