子宮内膜症の主要な発生仮説として、逆流した月経血中の子宮内膜組織が腹膜に接着・浸潤するという「子宮内膜移植説」が広く受け入られているが、その機序は明らかでない。「子宮内膜移植説」に基づいて開発したライブイメージング可能な発光・子宮内膜症モデルマウスを用いて、経時的な病変の発症・進展機序と分子発現の解析を行った。初期病変の観察や経時的な解析は動物モデルを用いても稀有である。子宮内膜症組織の腹膜への接着部位では、炎症性サイトカイン、接着因子、あるいは性ホルモンの関与が示唆されているが、詳細は不明である。特に、骨盤内炎症は疼痛や妊孕能低下の原因となることから、その作用の解明が本症における重要課題として残っている。局所炎症の解析を切り口にして、発生メカニズムと標的分子の探索をした。前核期の受精卵にマイクロインジェクションで遺伝子導入したのちに偽妊娠マウスに胚移植・出産させることにより、独自に開発したトランスジェニックマウスの作製に成功した。CAGあるいはヒトIL-6プロモータとエメラルド・ルシフェラーゼ遺伝子の導入により、移植した子宮内膜組織が恒常的に発光する生物発光マウスを得た。非侵襲的に体外から観察可能なIVISシステムにより、子宮内膜症組織の母地となる移植子宮内膜組織の経時的動態解析を行い、初期段階からの発光組織数・発光量・接着位置を体外から経時的に観察し、病態概念に迫る結果を得た。さらには、移植組織を受ける側のマウス腹膜組織の発症・進展における役割に着目した研究を継続している。
|