研究課題
本研究の方針は,ドライバー変異であるMED12変異を持たない子宮筋腫(MED12(-)筋腫)における発生機序の解明のため,独自に見出したMED12(-)筋腫の3つのサブタイプ毎に子宮筋腫の発生に関わる上流の制御遺伝子を特定することであった。我々はこれまでにエピ変異により発現変異した上流の制御遺伝子が子宮筋腫の発生に関与するという仮説のもと,MED12変異を持つ子宮筋腫(MED12(+)筋腫)において,DNAメチル化とmRNA発現データを用いた統合解析により候補遺伝子を抽出し,SATB2とNRG1がその発生に関与し得ることを報告した。本研究では,同様にMED12(-)筋腫のサブタイプ毎に候補遺伝子の抽出を試みたが,いずれも有力な候補が抽出できなかった。MED12(+)筋腫はmRNA発現レベルで非常に均一な集団であるのに,MED12(-)筋腫の各サブタイプは不均一なため,候補の抽出には検体数が足りなかったことがその主因と考えられる。そこで,MED12(-)筋腫の発生に関わる上流制御遺伝子の特定は今後の課題として,まず,現在詳細でないMED12(+)筋腫とMED12(-)筋腫における性質の差異を明らかにする方針に変更した。3つのサブタイプを一括しMED12(-)筋腫として扱い,mRNA発現データを基にMED12(-)筋腫において筋層と比較して発現が変異している遺伝子および遺伝子ネットワーク解析を用いて共発現する遺伝子を抽出し,抽出遺伝子が関わるシグナル経路についてMED12(+)筋腫のものと比較した。 その結果,MED12(+)筋腫では細胞外基質産生関連遺伝子の発現が亢進している一方,MED12(-)筋腫では血管新生関連遺伝子の発現が亢進していた。また,SATB2とNRG1がMED12(-)筋腫の発生にも関与する可能性が示唆された。現在,上記の結果について投稿準備を進めている。
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