研究課題/領域番号 |
18K09267
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
杉浦 真弓 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (30264740)
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研究分担者 |
大石 久史 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (30375513)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 習慣流産 / 不育症 / RUFY3 |
研究実績の概要 |
不育症の原因は抗リン脂質抗体、染色体均衡型転座、子宮奇形、胎児染色体異数性である。本研究では、10回以上繰り返す難治性習慣流産Super流産患者とその両親のトリオ解析とマウスゲノム編集により原因遺伝子を同定する。 5家系の全エクソントリオ解析を行った。非同義置換、スプライス変異、ストップゲイン、フレームシフト変異に着目し、各患者に13-27候補遺伝子を絞り込んだ。各家系に共通の遺伝子はみられなかった。TDRD15, RUFY3(家系4)に、PIPTNM1, OR9K2(家系2)にサンガー法により新規変異を確認した。 RUFY3は、新潟大学五十嵐道弘教授らがRufy3欠損マウス作成を報告したため、共同研究として受精卵の提供を受けた。全身性のRufy3遺伝子欠損マウスは生直後に死亡し、ヘテロメスマウスにおいても、野生型と比較して、妊娠、出産に明らかな差がなかった。 Tcf23は、プロゲステロン依存性に子宮内膜間質細胞の脱落膜化に関与することが示唆されている(Kommagani R et al, Biol Reprod 2014)。マウス子宮内膜間室細胞を分離し、脱落膜化刺激を行ったところ、有意にTcf23の発現上昇を認めた。さらに、Tcf23遺伝子のホモ欠損マウスは、in vitroにおいて形態学的、IGFBP1等の発現が減少しており、Tcf23の脱落膜化への関与を明らかにした。一方で2-3ヶ月齢における遺伝子欠損マウスは、野生型マウスと同様に妊娠、出産可能であるものの、高齢マウスでは、妊孕性に明らかな異常がないものの、複数の個体で自然分娩の過程に異常を認めており、現在、そのメカニズムの解析を行なっている。 OR9K2遺伝子について、マウスOR9K2遺伝子を標的とするCRISPR/Cas9複合体を作製し、in vitroにおいてその活性が高いことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者6人と両親に全エクソンシークエンスを行ったが、検体不足のために5家系のトリオ解析となった。TDRD15, RUFY3(家系4)、PIPTNM1, OR9K2(家系2)に新規変異を確認した。QRICH2(家系4)、SIKE1, ZNF585A, LAMB4、ZNF77(家系1)はシークエンスの結果変異はなかった。CHD3(家系7)新規変異確認。HBQ1, FBXO15(家系6)、ABCA1, SKIDA1, SLIT1, DYNAP, MKL1(家系7)のシークエンスは今後の予定。 Rufy3ヘテロマウスでは、野生型と比較して、妊娠、出産に明らかな差がないことを明らかにし、引き続き、これらマウスの交配と妊孕性の確認を行っていく。 マウス子宮内膜間室細胞を分離し、脱落膜化刺激を行ったところ、有意にTcf23の発現上昇を認めた。さらに、Tcf23遺伝子のホモ欠損マウスは、in vitroにおいて形態学的、IGFBP1等の発現が減少しており、Tcf23の脱落膜化への関与を明らかにした。一方で2-3ヶ月齢における遺伝子欠損マウスは、野生型マウスと同様に妊娠、出産可能であるものの、高齢マウスでは、妊孕性に明らかな異常がないものの、複数の個体で自然分娩の過程に異常を認めており、現在、そのメカニズムの解析を行なっている。 PIPTNM1遺伝子について、IMPC(International Mouse Phenotyping Consortium)から、その遺伝子欠損マウスが作製され、雌雄ともに生殖組織に明らかな差が認められていないことが発表された。 OR9K2遺伝子について、マウスOR9K2遺伝子を標的とするCRISPR/Cas9複合体を作製し、in vitroにおいてその活性が高いことを確認した。今後、受精卵に導入し、遺伝子欠損マウスの作製に供する。
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今後の研究の推進方策 |
家系1, 4, 7について検体採取を再度行い、成育医療研究センター周産期病態研究部秦健一郎部長により全エクソン解析を行う予定である。 マウスゲノム編集による新規変異が原因遺伝子であることの実証:Super流産原因遺伝子が患者ごとに複数認められる可能性を考え、新規変異の確認された遺伝子KOマウスを作成し妊孕性を確認する。Super流産では胎児異常はみられないため、野生型マウスから得られた受精卵を、遺伝子欠損マウスに移植すると不妊であり、逆の移植実験(遺伝子欠損⇒野生型)では出産可能であることを示すことによって、胚の発生障害の原因が母体側にあることを証明する。他の候補遺伝子OR9K2(家系2)について欠損マウス作成と妊孕性の確認を行う。 HBQ1, FBXO15(家系6), family 7-ABCA1, SKIDA1, SLIT1, DYNAP, MKL1(家系7)についても新規変異を確認する。
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