研究課題/領域番号 |
18K09268
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
カーン カレク 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60336162)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エンドメトリオーシス / メタゲノム / GnRHa |
研究実績の概要 |
近年、細菌培養検査による子宮内細菌叢の増加と子宮内膜症の発生の関連が報告されている。特に低エストロゲン状態では子宮内細菌叢は増加する。本研究では、子宮内膜症患者における子宮内腔および卵巣胞内容液中の細菌叢をメタゲノム解析を用いて同定する。また、GnRHa投与が子宮内細菌叢へ与える影響について検討する。 2013年11月より2014年6月までに、ホルモン療法を施行せずに手術を行った子宮内膜症患者(n=16)と非子宮内膜症患者(n=16)および術前にGnRHa投与後に手術を行った子宮内膜症患者(n=16)と非子宮内膜症患者(n=16)を対象とし、それぞれの子宮内腔から綿棒を用いて細菌を採取した。さらにホルモン療法未使用群のうち、子宮内膜症患者(n=8)あるいは非子宮内膜症患者(n=8)の卵巣胞内容液を術中に採取した。上記検体より抽出したRNAからPCR法で16S rDNAを作成し、Illumina社製MiSeqを用いて塩基配列を網羅的に解析し各群の細菌叢を比較した。 子宮内腔および卵巣胞内容液から多種類の細菌のゲノムが幅広い割合(0.0197.8%)で検出された。子宮内膜症性卵巣胞の内容液は非子宮内膜症性卵巣胞に比べStreptococcaceaeとStaphylococcaceaeが有意に増加していた(p<0.05)。子宮内腔ではGnRHa投与群では非投与群に比べLactobacillaceaeが有意に減少し(p<0.01)、Streptococcaceae、Staphylococcaceae、Enterobacteriaceaeが有意に増加していた(p>0.05)。 子宮内膜症患者の子宮内腔と卵巣胞内により強い不顕性細菌感染が示唆された。GnRHa療法はこれを助長する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Prospective collection of endometrial samples after single and combined treatment with GnRHa and antibiotic is completed.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 対象の選定 : ARTを行う不妊女性(40歳未満、IVFあるいはICSIを施行) (2) 腟内pHの測定と子宮頸管粘液の採取(胚移植前): 子宮頸管内に綿棒を挿入し頸管粘液を採取する。採取した綿棒はPBSで洗浄し-20℃で冷蔵保存する。ELISA法を用いて抗 菌ペプチドであるβ-defensin/SLPIやLIFを測定する。 (3) 子宮内膜検体の採取およびDNA抽出: 胚移植後に子宮内膜検体を採取する。移植チューブを無菌的に子宮内に挿入し胚移植を行った後にチューブを抜去する。その後使用したチューブを洗浄しその洗浄液を内膜検体として-80℃で保存する。DNA抽出後イルミナ社MiSeq次世代シークエンサーを用いて子宮内微生物を同定する。 (4) ART臨床的アウトカムとの相関: 上記手法で同定された微生物あるいは細菌叢がART治療成績(胚の質、妊娠率、着床率、生児獲得率)や腟内環境(腟内pH、抗菌ペプチド β-defensin/SLPI)に与える影響について解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
Less visit to different countries for mutual research collaboration and involvement in the prospective collection of biological samples for the proposed research projects.
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