研究課題/領域番号 |
18K09270
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
下平 秀樹 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (70373214)
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研究分担者 |
工藤 千枝子 東北医科薬科大学, 医学部, 助教 (70816420)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | BRCA1 / PRAP阻害薬 |
研究実績の概要 |
遺伝性乳癌卵巣癌症候群の原因遺伝子であるBRCA1に病的バリアントを有する乳癌や卵巣癌はPARP阻害薬が有効であるが、BRCA1遺伝子のミスセンスバリアントは病的意義が不明なものが多数あるため、それらの機能的評価を行うことを目的としている。BRCA1遺伝子のミスセンスバリアントを効率的に作成するシステムを構築し、可能な限り多くのバリアントを細胞株に発現しPARP阻害薬への感受性を解析する計画である。出芽酵母を用いたBRCA1 cDNAのミスセンスバリアント作成システムを構築し、現在20データベース上病的バリアントとされているもの15種類、意義不明バリアント(VUS)とされているもの5種類を作成し、サンガーシークエンスにより確認した。ミスセンスバリアント作成系に関しては安定したシステムとなっており、ほぼ意図したバリアントの作成に成功している。中には意図しない部位にPCRエラーが検出されることあるが、同時に作成された別のクローンでは成功している場合が多い。BRCA1欠損細胞株5株(卵巣癌2株:UWB1.289、SNU-251、乳癌3株:HCC1937、MDA-MB-436、UACC-3199)をATCCより購入し、野生型BRCA1遺伝子を発現するエピゾーマルベクター導入を行った。BRCA1の発現を抗BRCA1抗体及び抗HA抗体で確認したが、細胞によっては発現が不十分なものもあるものの、UWB1.289、HCC1937では概ね良好な発現が確認されている。これらに対して、PARP阻害薬としてOlaparibを購入し、培養液に投与してMTTアッセイを行ったが、BRCA1発現細胞とコントロールベクタ―導入細胞において明らかな差が認められる投与量あるいは解析のタイミングなど至適条件の設定を試みているものの、条件設定がやや困難であり今のところ安定した結果が得られるところまで到達していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画より大変遅れた状況になっている。東北医科薬科大学医学部は2016年度に新設され、申請者は2017年度に東北大学加齢医学研究所から着任した。新研究棟は2018年度にオープンしたが、試験管、試薬、各種機器をゼロから買い揃える必要があり、準備が整うまでに非常に多くの時間を必要とした。未だに前職の頃の様にはできない部分が残っており、一つ一つ問題をクリアーし環境を整えていく必要が生じている。診療においては、今後の臨床研究なども踏まえて、規模を拡大していく必要があり、医学部の教育に関しては未だ卒業生が出ていない状況であり、一期生の学年が進む度に学生の講義や臨床実習など新たな負荷が加わってくる状況である。したがって、臨床および教育に費やすエフォートを増やさざるを得ず、研究に費やせる時間を安定して確保できないのが現状である。一人助教が加わり、個人の負担が軽減したので、今後は改善が期待できる。実際の研究においては、BRCA1変異細胞株はこれまで扱ってきた細胞株よりやや増殖が悪いような印象があり、細胞により遺伝子導入効率や発現効率に差があるので、どの細胞を選択すべきか慎重に検討する必要がある。条件設定ができれば、検体を増やすことはそれほど停滞なくできると見込んでいる。バリアント作成に関しては安定してできる体制が整っているが、労力がひつようであるため、1回の検体を増やし時間を節約することを考えるしかないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な実験を行うための物品はほぼ整い継続的に研究を進める基盤ができたと考えられる。まら、2019年度10月から、一人助教が加わったので、臨床業務、講義、実習を分担して行う体制が整いつつある。したがって、これまでよりは効率的に研究を進めることが出来、各スタッフの研究におけるエフォートを増やすことが出来ると考えられ改善が見込まれる。また、医学部4年生が年2人配属されることになっており、教育しつつ研究を進めることが可能と考えている。現在、BRCA1変異細胞株を使用した実験を行っているが、それらの細胞はBRCA1タンパク質を完全に欠損しているわけではなく、多くは短いタンパク質の断片を発現している。その断片が発現したバリアントの機能に影響を及ぼしていないかを検討するためにCRISPR-Cas9によるノックアウト細胞を樹立して発現することや、バリアントをノックインした細胞を樹立することを行う必要がある。PARP阻害薬に対する影響が、BRCA1以外の因子にも依存している可能性があり、出来るだけ異なる遺伝学的背景の細胞株で基礎実験を行い、最もBRCA1の機能が反映される系を選択する必要がある。BRCA1発現細胞とコントロールベクタ―導入細胞において明らかな差が認められる投与量あるいは解析のタイミングなど至適条件の設定を試みているものの、安定した結果が得られるところまで到達していない。Olaparib投与後からどの程度の時間で解析するのが最も評価に適しているか、BRCA1遺伝子発現のinducibleにすべきかどうかなど検討課題がある。、細胞株を選択する必要があるが、バリアントによっては薬剤感受性が細胞株の背景に依存する可能性は否定できず、多くのバリアントを複数の細胞株で解析するのが望ましいことには変わりがない。いずれにしても労力が必要であるため常に効率化を模索する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
新設医学部であり、研究室の立ち上げに時間と労力を必要とし、本格的に実験を行う体制が整うまでに時間を要したため、次年度使用額が発生した。時間の効率化のために外注の利用を増やすことを検討しており、今後はこれまでよりも出費がかさむと考えられる。また、CRISP-Cas9系など新規の実験を導入するため試行錯誤が必要であり、データ蓄積に結び付かない出費が発生することが見込まれる。本研究は、いったん解析の条件が決まれば、バリアントの検体を増やして、ひたすら解析することになるために、一定のランニングコストが必要になると予測され、今後の期間に集中して研究を推進することで予定金額は有効に活用できると考えている。
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