研究実績の概要 |
【目的】近年の若年子宮体癌症例の増加に伴い、妊孕性温存療法の重要性が高まっている。しかし、既存のホルモン療法は再発率が高いなどの問題がある。そこで、細胞リプログラミング技術を用いて、癌の治療や着床能などの内膜の機能変化を目指した新たな妊孕性温存療法の開発を試みる。 【方法】ヒト子宮体癌由来細胞株IshikawaおよびHOOUAにOCT4, SOX2, KLF4, c-MYCの山中4因子を、エピソーマルベクターを用いて導入した。形態学的変化を指標に、リプログラミングされた体癌細胞を回収し、未分化マーカーであるOCT4, SOX-2, KLF4, c-MYC遺伝子発現をリアルタイムPCRにて、SSEA4とTRA-1-60発現を免疫染色にて、アルカリフォスファターゼ活性を染色にて解析した。 【成績】4因子のトランスフェクション後、約4週間でリプログラミングされた癌細胞(Reprogrammed-Cancer cells, RC細胞)のコロニーが出現した。細胞境界が不明瞭でややドーム状に増殖するコロニーは、親株とは形態学的に大きく異なっていた。リプログラミング前後での内因性OCT4, SOX-2, KLF4, c-MYC遺伝子の発現変化を解析したところ、RC細胞ではこれらの遺伝子の発現が上昇していることが確認された。また、親株とRC細胞の免疫染色およびアルカリフォスファターゼ活性解析を行った結果、親株ではほとんど染色されなかったが、RC細胞のコロニーはSSEA4, TRA-1-60, アルカリフォスファターゼともに陽性であった。 【結論】子宮体癌細胞株2株が4因子によりリプログラミングされることが明らかとなった。また、形態学的変化および未分化マーカーの上昇を認め、もとの癌細胞とは異なる性格を有する可能性が示唆された。
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