研究課題/領域番号 |
18K09273
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
黒田 恵司 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (60459162)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 子宮内膜脱落膜化 / 子宮内膜間質細胞 / 細胞老化 / サーチュイン / レスベラトロール / 着床 / 流産 |
研究実績の概要 |
【目的】レスベラトロールはSirtuin (SIRT)1を活性化し、レチノイン酸シグナルを含む様々な分子経路を介し、細胞老化や酸化ストレスを抑制する。そのため臨床において卵巣予備能温存の目的に頻用されている。しかし着床における子宮内膜脱落膜化への影響を解析した報告はない。レスベラトロールのレチノイン酸シグナルと子宮内膜脱落膜化への影響を解析した。 【方法】インフォームドコンセントし同意を得た患者より子宮内膜を採取し、初期培養後、子宮内膜間質細胞を分離・増殖した。cAMPおよびプロゲステロンを添加し細胞をin vitroで脱落膜化させ、脱落膜化過程でレスベラトロールを添加し、非添加群とレチノイン酸シグナル関連遺伝子および脱落膜マーカー(PRL, IGFBP1)の発現を分子解析した。 【結果】レスベラトロールの添加により子宮内膜間質細胞のSIRT1発現が亢進した。またレスベラトロール添加により、子宮内膜脱落膜化過程においてPPARβ/δの発現増加(細胞分化の誘導)とCRABP2-RARαシグナル(アポトーシスの誘導)の発現抑制を認め、2つのレチノイン酸シグナルを制御していた。しかし、脱落膜化マーカーであるPRL、IGFBP1の発現は著名に抑制された。 【結論】レスベラトロールはSIRT1遺伝子およびレチノイン酸シグナルを介し、細胞分化を誘導しアポトーシスを抑制していたが、着床に重要な子宮内膜脱落膜化を抑制していた。子宮内膜の細胞分化と考えられてきた落膜化過程はアポトーシス経路も重要であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト子宮内膜脱落膜化における細胞分化・細胞老化のバランスの異常が脱落膜化の障害となり、着床不全や流産に起因すると仮定し、証明することが研究の核心である。まず正常妊孕能女性の子宮内膜脱落膜化過程において細胞老化をレスベラトロールで抑制することで子宮内膜脱落膜化過程が抑制されることがわかった。これは仮定していた結果と同様でさらに詳細を今後研究で確認し、証明していく。
|
今後の研究の推進方策 |
レスベラトロールによるヒト子宮内膜脱落膜化の抑制の詳細を研究で明らかにすることを予定している。さらにレスベラトロールは不妊治療において加齢に伴う卵巣機能の低下を抑制する目的でサプリメントとして使われており、実際に投与している施設でのデータで不妊治療におけるレスベラトロールの影響を明らかにする。
|