研究実績の概要 |
これまで行ってきた子宮内膜の研究より確立した、体外受精を繰り返しても妊娠しない着床不全症例に対する、甲状腺機能、血栓性素因、免疫機構、子宮内環境の精査・加療OPTIMUM (OPtimization of Thyroid function, Thrombophilia, Immunity, and Uterine Milieu) treatment strategy (以下OPTIMUM)を、流産を繰り返す不育症の患者に行い論文化した。 2回以上連続して流産した既往のある女性に対し、以下の検査を行った:子宮鏡検査、子宮内膜組織のCD138免疫染色および子宮内細菌培養検査、血清Th1・Th2細胞値、ビタミンD値、甲状腺検査、血栓性素因検査。治療として子宮内病変に子宮鏡手術、慢性子宮内膜炎に抗菌薬治療、Th1/Th2細胞比の異常高値にビタミンD補充およびタクロリムスの投与、甲状腺機能異常に対し甲状腺専門医の精査および低下症にレボチロキシン投与、血栓性素因に対し低用量アスピリンを投与した。OPTIMUM後の妊娠成績を確認した。 対象患者の不育症のリスク因子は、子宮内病変66例(57.4%)、Th1/Th2細胞比高値50例(43.5%)、甲状腺機能異常33例(28.7%)、血栓性素因33例(28.7%)であった。OPTIMUM群とコントロール群のそれぞれの初回妊娠後の生産率は、40歳未満で78.1%、42.3% (p=0.002)、40歳以上で55.6%、30.0% (p=0.09)で、40歳未満でOPTIMUM群が有意に高かった。 OPTIMUMは、世界で初めて着床不全と不育症を同時に治療が可能な方法である。40歳以上では年齢に伴う流産率が高く、有意差を認めなかったが、着床前スクリーニングなどを併用することで妊娠成績の向上が期待できる。
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