研究課題
これまで行ってきた子宮内膜の研究より確立した方法を用いて、不妊症や流産のリスク因子である慢性子宮内膜炎(CE)のリスク因子となる子宮内病変の解析と子宮鏡手術の治療効果について研究を行い以下の通りまとめた。子宮内疾患に対し子宮鏡手術を施行した不妊女性337例を対象とし、術中子宮内膜組織を採取しCD138免疫染色および子宮内細菌培養検査を行った。CEの診断は400倍顕微鏡下10視野でCD138陽性細胞5個以上とした。術後CEと診断された231例で、抗菌薬を投与せずにCD138免疫染色検査を再検し術後の治癒率を確認した。また子宮鏡検査で子宮内病変を認めなかった89例(対照群)と比較した。CE罹患率は子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、子宮腔内癒着、中隔子宮でそれぞれ 85.7% (258/301)、69.0% (20/29)、78.9% (30/38)、46.2% (6/13)で、対照群の15.7% (14/89)より高かった。多変量解析ではオッズ比(95%信頼区間)はそれぞれ27.69 (15.01-51.08)、2.75(0.92-8.17)、8.85 (3.26-24.05)、0.19 (0.05-0.66)と、有意に子宮内膜ポリープと子宮腔内癒着で高く中隔子宮で低かった。手術によるCE治癒率は89.7%、100%、92.8%、83.3%と疾患による有意差はなく、多くのCEが抗菌薬を投与せず子宮鏡手術のみで治癒していた。CEは子宮内膜ポリープと子宮腔内癒着で有意に罹患率が高かった。CEの多くは子宮内感染のため抗菌薬による治療が一般的だが、抗菌薬を投与しなくても子宮鏡手術は疾患によらずCEの治癒効果が高く、子宮内環境の改善に役立つ可能性が示された。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)
Fertility and Sterility
巻: 118 ページ: 568-575
10.1016/j.fertnstert.2022.05.029
Journal of Obstetrics and Gynaecology Research
巻: 48 ページ: 521-532
10.1111/jog.15150