研究課題/領域番号 |
18K09275
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
佐藤 可野 国際医療福祉大学, 医学部, 助教 (00511073)
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研究分担者 |
河村 和弘 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (10344756)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 老化 / p16 / 卵巣 / 卵胞発育 |
研究実績の概要 |
p16はがん抑制遺伝子としても知られる細胞周期関連因子である。細胞が老化の過程で分裂を繰り返し、テロメア長が短縮して発がんストレスが生じた場合には、p16が細胞周期を止めてアポトーシスを誘導し癌化を防ぐ自己防御機構としての役割を持つ。正常細胞が分裂寿命に達したりストレスを生じた場合には、p16発現が上昇し細胞老化を起こす。p16発現は非老化細胞では極めて低いため、細胞老化マーカーとして注目されている。卵子自身は受精するまで細胞分裂を開始しないが、卵胞構成体細胞は盛んに増殖し、卵胞が発育する。卵子は卵胞体細胞から様々な物質を取り込み成熟していくが、老化した卵胞体細胞では増殖能やmRNA・タンパク合成能などが低下し、卵胞発育不全や卵子の質の低下がおこる。しかし、これまでp16と卵子の老化に関する研究は皆無あった。本研究では、p16に標的を絞ることで、定量性のある客観的な方法により、安価で簡便にリアルタイムに卵子の老化を診断できる方法を開発する。本研究ではp16を標的とした卵子の老化を診断する方法を開発し、p16抑制による卵子の質の改善を目指し、以下の実験を計画している。 ①マウス卵巣におけるp16の局在を同定し、老化による発現変化について明らかにする。②p16の発現量と卵子の質の相関を解析するため、マウスの各卵胞構成細胞でのp16の発現とそれぞれの卵胞から採取した卵子に体外受精を行い、卵子の質を反映する受精率、胚発生率、妊娠率を調べる。③ヒトの各卵胞の構成細胞および卵胞液のp16の発現量を測定し、得られた卵子の体外受精後の受精率、胚発生率、妊娠率などの臨床成績との関連を調べる。本年度はマウス卵巣における各週齢のp16の局在を同定した。さらに主要臓器における若年齢および高齢マウスのp16の遺伝子発現について明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度当学における動物施設が始動しておらず全く動物実験を行うことが出来なかった為、動物を用いた実験計画が大幅に遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
予備試験の結果では高齢マウスの卵巣には卵胞がほとんど存在していなかった。しかし、中年齢加齢マウスにおける残存卵胞の存在する卵巣においてp16の局在を調べると顆粒膜細胞により強く発現することを明らかにした。 再現性を得る為に若年性および高齢マウスの卵巣構成体細胞(卵丘細胞、顆粒膜細胞、莢膜細胞)におけるp16の遺伝子発現をもう一度測定する予定である。 今年度は老化によるp16の発現量の増加が卵子の質に及ぼす影響について、各週齢のマウスを用いて卵巣体細胞のp16の発現量を定量的RT-PCRにて測定しつつ、卵子の質を反映する受精率、胚発生率、着床率、流産率、妊娠率を調べるため、成熟卵子を採取して体外受精を行う。これらの結果から卵子の質とp16遺伝子発現量に相関があるかを明らかにする。さらにその閾値を決定する予定である。 高齢マウスでは卵胞発育不全によるエストロゲン分泌低下が子宮内膜形成不全をきたし、胚の着床以降に影響を及ぼす可能性があるため、着床率、流産率、妊娠率の評価は、体外受精で得られた胚を若年レシピエントマウスに移植して評価する。これら一連の解析により、卵子の質が低下する卵巣体細胞のp16発現量の閾値を決定する。もしRNAレベルでの相関が認められなかった場合には、ELISAを用いてp16を測定し、卵子の質との相関を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は当学における動物施設が稼働しておらず動物実験が出来なかったため大幅に実験計画が遅れている。その為今年度使用分を次年度使用する予定の為次年度使用額が生じた。今年度使用する予定であった試薬、マウス、実験消耗品を購入予定である。また、マイクロアレイ受託サービスにも使用する予定がある。
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