研究課題/領域番号 |
18K09277
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
根木 玲子 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 室長 (90600594)
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研究分担者 |
吉松 淳 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (20221674)
宮田 敏行 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 非常勤研究員 (90183970)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 妊娠高血圧症候群 / 補体因子 / 静脈血栓塞栓症 / 抗凝固療法 / 妊娠 |
研究実績の概要 |
本研究テーマで以下の2つの研究を実施している。 「妊娠高血圧症候群(Hypertensive disorders of pregnancy :HDP)と補体系因子との関連を明らかにする研究」:HDPの発症メカニズムである血管内皮障害の原因究明として補体機能に着目し、補体マーカー検査、補体関連因子を中心とした115遺伝子の解析を日本補体学会の協力の元に実施した。症例は妊娠高血圧(GH)3例(うち重症1例)、妊娠高血圧腎症(preeclampsia, PE) 7例(うち重症5例)、HDP既往歴のみで今回未発症4例の14例である。重症HDPに抗CFH抗体陽性を2例認めた。遺伝子解析では海外で報告された非典型溶血性尿毒症症候群(atypical hemolytic uremic syndrome, aHUS)と関連する遺伝子のバリアントは認めなかった。補体関連因子では症例を病型分類(非PE7例、PE7例の2群)、重症度分類(HDP非重症8例、HDP重症6例の2群)、時系列(分娩前、分娩後3日以内の産褥早期、分娩後4日以降の産褥後期の3群)に分類し、影響因子を混合効果モデル解析で検討中である。 「妊娠中の静脈血栓塞栓症患者等に対する治療量未分画ヘパリン(UFH)のプロトコール確立の研究」:自施設での活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を用いた妊婦の治療量UFHプロトコールの妥当性を、抗Xa活性(ヘパリン濃度)を用いて検証した。妊娠週数毎にAPTTと抗Xa活性、第Ⅷ因子、vWF、アンチトロンビン活性を測定。抗Xa活性とAPTTとの乖離例の原因を検討した。登録した10例の解析結果、抗Xa活性で7例は治療域内にあり、プロトコールは許容されるものと判断された。また10例共に重篤な出血や血栓イベントも認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「HDPと補体系因子との関連を明らかにする研究」:登録した15例中、解析の終了した14例について、データの統計処理を行っている。その結果、重症例でBa高値、抗CFH抗体陽性2例を認めた事から重症化に補体第二経路活性化の関与が、またC3,C4が産褥後期に上昇した事よりaHUSの発症が妊娠中ではなく分娩後に多い理由を説明するのではないかと推察された。最終的に15症例で統計解析し論文化する。なお遺伝子解析については現在の所、疾患に関連すると考えられる遺伝子のバリアントは認めなかった。ただし115遺伝子の中に、アレル頻度の非常に低いバリアントが見つかっており、今後さらに症例を集積し検討が必要であると考える。 「妊娠中の静脈血栓塞栓症(Venous thromboembolism, VTE)患者等に対する治療量UFHプロトコール確立の研究」:解析の終了した10例について検討した結果、自施設でのAPTTを用いた妊婦の治療量UFHのプロトコールは、7例で許容できるものと考えられた。データをまとめて論文に受理された(Neki et al, Int J Hematol, 2019)。また現在登録中の3例を含む15症例についても、引き続き解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
「HDPと補体系因子との関連を明らかにする研究」:これまでの結果から、HDPと補体系因子の関連より、HDPの重症化には補体第二経路活性化の関与が示唆された。またC3,C4が産褥後期に上昇した事よりaHUSの発症が妊娠中ではなく分娩後に多い理由を説明するのではないかと推察された。今後は、論文化に向けて15症例で統計解析を実施する予定である。 「妊娠中のVTE患者等に対する治療量UFHのプロトコール確立の研究」: 今回、自施設のプロトコールでAPTT及び抗Xa活性でも治療域に留まることが困難であった3例(うち2例は先天性アンチトロンビン欠乏症)については、さらなるプロトコールの検討が必要である。今後、現在登録中の症例を、原因疾患別、VTEの発症時期別に検討を加える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
検体をまとめて測定する必要性から、試薬等の購入が繰り越されたため繰越金が生じた。今後は、解析に必要な試薬の購入、論文投稿、情報発信や情報収集のための学会出張旅費等に充てる予定である。
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