研究実績の概要 |
「妊娠高血圧症候群(Hypertensive disorders of pregnancy :HDP)と補体系因子との関連を明らかにする研究」では、HDPの発症メカニズムである血管内皮障害の原因究明として補体機能に着目し、補体マーカー検査、補体関連因子を中心とした115遺伝子の解析を日本補体学会の協力の元に実施した。遺伝子解析では海外で報告された非典型溶血性尿毒症症候群(atypical hemolytic uremic syndrome, aHUS)と関連する遺伝子のバリアントは認めなかった。補体関連因子では妊娠高血圧腎症発症で分娩前に古典経路と第二経路の活性化が示唆された。産褥後期にC3, C4, Baの上昇したことより妊娠関連HUSが主に産褥期に発症しやすいことを説明できる可能性が示唆された。「妊娠中の静脈血栓塞栓症患者等に対する治療量未分画ヘパリン(UFH)のプロトコール確立の研究」では、自施設での活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を用いた妊娠中のUFHによる治療量抗凝固療法のプロトコールの妥当性を、抗Xa活性(ヘパリン濃度)等を用いて検証した。登録した10例の解析を終え、抗Xa活性で検証しプロトコールは許容されるものと判断された。本研究について原著論文に続いて「妊娠中の治療量抗凝固療法について」と題し日本血栓止血学会誌 32: 594-599, 2021.に総説として掲載し、成果を広く公表した。また成果の一部をJ Obstet Gynaecol Res 47: 3008-3033, 2021.に掲載し情報を国内外にも発信した。
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