研究課題
まず、PD-L1遺伝子を過剰発現させると、EMTを示す形態の変化及び上皮系マーカーの発現減少、間葉系マーカーの発現増強、また癌細胞の浸潤能の増強を認めた。逆にPD-L1遺伝子の発現をノックアウトすると、EMTの形質と癌細胞の浸潤能が抑制された。頸癌細胞におけるPD-L1遺伝子は EMTおよび頸癌細胞浸潤能の亢進を引き起こすことを明らかにした。そして、アジレントマイクロアレイを用いて、我々の研究室で頸癌細胞HeLaから樹立された高浸潤性亜細胞株と親株のmiRNA発現を比較することで、高浸潤性亜細胞株で発現量が低値を示す複数のmiRNAを、浸潤抑制に関わるmiRNA候補として同定した。頸癌組織と周辺正常組織から、total RNAを抽出して、Realtime PCRにより、これらのmiRNA候補は癌で発現を低下したことを確認した。更に、メタ分析によりPD-L1を標的とするmiRNA群をin silicoで予測し、候補miRNAと照合した結果、PD-L1の制御に関わる癌抑制miRNA候補(miR-140、miR-142、miR-340、miR-383など)を絞り込むことに成功した。miRNA候補を強制過剰発現させることにより、PD-L1蛋白質発現の低下をWestern blot法により確認した。PD-L1 3′-非翻訳領域を含むレポータープラスミドを用いたルシフェラーゼアッセイでは、PD-L1の直接標的miR-140、miR-142、miR-340及びmiR-383を同定した。頸癌細胞の増殖と浸潤アッセイによって、miR-140、miR-142、miR-340及びmiR-383の癌抑制効果の増強が確認された。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に基づき、頸癌細胞悪性形質の制御におけるPD-L1遺伝子の機能を解明した結果、PD-L1遺伝子は癌促進因子として働き、頸癌細胞の増殖及び浸潤などの悪性形質を著しく促進することを明らかにした。頸癌細胞株を用いた実験では、PD-L1遺伝子の発現制御を直接に制御する癌抑制的miRNA群を発見した。これは研究計画通りの成果であり、順調に進展していると判断した。
研究計画に基づき、PD-L1の発現亢進に関わる癌促進的miRNA候補の同定を試みる。これらのmiRNA候補によって支配される下流シグナル分子群の発現量の変化をWestern blot法により検討する。また、下流シグナル分子群の発現を変動させ、頸癌細胞悪性形質に与える影響を調査する。特に、新規PI3K阻害剤ZSTK474、MAPK阻害剤PD0325901、STAT3阻害剤BP-1-102、p53の安定性を高めるNutlin-3の投与によるPD-L1遺伝子の発現、PI3K/AKT分子経路、RAS/MAPK分子経路、STAT3分子経路、p53分子経路の活性及び頸癌細胞の悪性形質に与える影響を、分子生物的手法で検討し、PD-L1遺伝子発現の亢進に関与する分子シグナル伝達経路の特定を試みる。
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 8件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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