研究実績の概要 |
本研究では妊娠高血圧腎症(preeclampsia:PE)の発症を予知する尿中バイオマーカー候補物質を探索し,その有効性を検討するとともに先行研究が進んでいる血中sFlt-1,PlGFの有効性と比較した. 予備検討において候補物質として選択されたのはpodocyte関連タンパクであるnephrinとangiogenic factorであるPlGFであった.これらについてPE発症例と非発症例における尿中濃度を比較した.Nephrin濃度はPE発症例で高値を示す傾向が認められcreatinine(Cr)補正濃度は有意な増加を示した.一方PlGFはCr補正の有無に関わらずPE発症例の尿中濃度は有意に低値を示した.また,妊娠34週未満に発症する早発型PEの検討において,nephrinでは発症例と非発症例で差異が認められなかったが,PlGFはCr補正の有無に関わらず早発型PEの尿中濃度は有意に低値を示した.ROC解析による早発型PE発症予知における尿中PlGFのAUC値は0.925と高値であり,妊婦健診時のスクリーニング検査として尿中PlGFは十分な予測能を有すると考えられた. PE発症予知の新規尿中バイオマーカーを検索するために,不死化ヒトpodocyte株細胞の培養液にPE発症妊婦血清を添加して,培養上清中に増減する物質のプロテオミクス解析を行った.1.PE発症妊婦血清添加培養液,2.1の培養液で培養した培養上清,3.無血清培地で培養した培養上清,の3検体についてiTRAQ法で解析した結果,PE発症妊婦血清の添加によって培養上清中に産生が増加するタンパクとして60S acidic ribosomal protein P2,Apolipoprotein A-Iが,産生が減少するタンパクとしてImportin subunit beta-1,Exostosin-2が同定された.
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