研究課題
母体加齢によるヒトの高流産率(9割)の主因は、卵子の成熟不良や加齢変性に伴う染色体分離異常の急増(20%→50%以上)である。この現象はヒトに特有であり、齧歯類などの短命な実験動物での解析が不可能なためメカニズムが未解明で克服も厳しい現状である。一方、申請者は薬剤処理したヒト成熟不良卵子を利用して初めて人為的な卵子老化抑制に成功し、この現象にオーロラ蛋白とコーヒシンの発現変化が関連する可能性を見出した。ヒト卵子老化メカニズムが解明され、臨床応用されれば不妊治療の成績が大きく向上する可能性がある。本申請では、ヒト卵子老化メカニズムにおけるオーロラ蛋白及びコーヒシン蛋白の働きに焦点をあてる。平成30年度は、オーロラ蛋白およびコーヒシン蛋白の発現変化を蛋白レベルで明らかにすることにあった。そこで、老化モデル卵子の核にリコンビナントのリン酸化オーロラ蛋白を注入した場合の遺伝子発現の変動をマイクロアレイで調査し、これを薬剤処理によりオーロラ蛋白が上昇して老化がキャンセルされた卵子の遺伝子発現の変動と比較して卵子老化へのオーロラ蛋白の関与を検討した。その結果、オーロラ蛋白の注入に伴ってオーロラ遺伝子の発現が有意に低下することが認められた。一般にオーロラ蛋白の発現は転写後調節によると考えられているが、蛋白発現により遺伝子発現に負のフィードバックがかかる可能性が考えられた。一方で、コーヒシン蛋白等の老化関連因子の発現変動はオーロラ蛋白注入および薬剤処理した卵子で共通しており、オーロラ蛋白が卵子老化に重要な関わりをもつことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度は、オーロラ蛋白およびコーヒシン蛋白の発現変化を蛋白レベルで明らかにすることにあったが、本研究3年間の中心課題である、ヒト卵子老化においてオーロラ蛋白が鍵となることが確認された。この点は来年度位後のテーマも含んでおり、今年度の目標の一部であった継時的な蛋白発現変化の確認は完了していないが、概ね順調に進んでいる。
当初の計画通りにオーロラ蛋白およびコーヒシン蛋白の発現変化を蛋白レベルで次年度にかけて進めていく。
本年度から来年度にかけてオーロラ蛋白およびコーヒシン蛋白の発現変化を蛋白レベルで継時的に明らかにすることにあった。この際に使用する抗体の補充分の納品が遅れているために未使用額が生じた。この分は来年度での購入の予定である。
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