研究課題/領域番号 |
18K09280
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
渡邉 誠二 弘前大学, 医学研究科, 講師 (10241449)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 染色体異常 / ヒト卵子 / 細胞周期 |
研究実績の概要 |
女性が高齢化するのに伴って流産率が著しく高まる(9割)のはよく知られている。この原因は、長期間に渡り卵巣内に保存されていた卵子が加齢変化(成熟不良や変性)を起こし、排卵する際に高頻度に染色体異常を生じるためで、このような卵子は受精しても早い段階で流産に至る。この卵子の老化は特にヒトで顕著な現象であり、齧歯類などの短命な実験動物では流産は増えるものの染色体異常の増加はごくわずかである。したがって、実験動物での解析によってヒト卵子の老化現象のメカニズムを解明するのは厳しい現状で、これを克服する手段も見つかっていない。私は薬剤処理したヒト成熟不良卵子を利用して初めて人為的に卵子の染色体異常を抑制することに成功し、この現象を調査することでヒト卵子の老化メカニズムの解明を目指している。 これまでの研究で卵子の老化には、卵子成熟の際に起こる細胞分裂で染色体を正常に分配するタンパク質の減少が起こることが判明していたが、今回、老化卵子では分配前の染色体の配列が正常に行われているかをチェックするタンパク質が十分機能していないために、準備が整わないままに染色体の分離がおこり、その結果染色体異常が生じてしまう可能性が、遺伝子発現とタンパク分布の変化から新たに見出された。さらに、機能を失ったタンパク質は細胞内の一定の場所に貯蔵されたまま移動できないために正常な役割を果たせず、染色体異常が生じている可能性も示唆された。この現象はたいへん興味深く、今後の新たな研究の展開が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナによる移動制限により研究協力先との共同実験が不可能となり、研究材料の入手も困難になった為遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
新たに見つかったチェックタンパク質の動態について主に追跡していく。また、これまでの結果をタンパク質の発現量の変化として捉えることを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナにより研究材料の入手、共同研究が停止された為、未使用金が生じた。 これは、次年度において共同研究およびサンプルが入手された際の旅費および実験消耗品として使用される。
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