研究実績の概要 |
卵巣癌明細胞腺がんの臨床サンプルより同定したTERT core promoter変異(既知のものを含む13種類)がプロモーター活性に影響するかをLuciferase assayにて評価した。 その結果、活性上昇型が5種類、活性変化なしが2種類、活性低下型が6種類存在することが明らかとなった。活性の変化と再発率との関係を調べると、変化がないタイプでは再発率が26.3%であったのに対し、活性上昇型では8.3%に低下した。一方、活性低下型変異をもつ症例での再発率は55.6%と再発率が約2.1倍上昇することが明らかとなった(OR:13.75,p=0.0178)。 卵巣癌細胞株TOV21Gを用いてCRISPR Cas9によるpromoter領域のゲノム編集を行なったところ、点変異の導入直後は、変異が導入されていると思われる細胞がDNAミスマッチ切断法にて確認できたが、単一コロニーに分離することができなかった。これはcore promoter活性の低下による細胞増殖抑制が関連すると推定された。 昨年度の実験で、RXR agonist(Bexaroten)がTERTとは関係のない機序で卵巣癌細胞(漿液性腺がん株2種類、明細胞腺がん株1種類)の細胞死を誘導する知見を得たため、RXR agonistの細胞死誘導作用についての解析を行った。形態学的観察により、RXR agonistを刺激した細胞では細胞の膨潤、細胞膜の破裂を伴う特徴的な細胞死を誘発していたため、細胞破裂を伴う細胞死であるパイロトーシスに着目した。RXR agonistはパイロトーシスマーカーであるカスパーゼ4およびガスダーミンEの活性化を誘導し、Caspase1,4阻害剤はbexによる細胞死を減弱された。
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