研究課題/領域番号 |
18K09291
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
石川 雅子 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (50467718)
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研究分担者 |
中山 健太郎 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 准教授 (70346401)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 免疫チェックポイント関連分子 / 卵巣癌 / MSI |
研究実績の概要 |
婦人科癌の中でも死亡率の高い卵巣癌において、癌免疫療法の効果予測因子を探索し、より効果的な治療群を見いだすことが本研究の目的となる。昨年度の報告書で卵巣癌においてMismatch repair蛋白(MMR蛋白)発現と免疫チェックポイント関連分子Programmed Cell Death-1(PD-1)とそのリガンド(PD-L1)またCD8の発現量との相関を解析し、MSIと免疫チェックポイント関連分子陽性率との相関を検討したが、統計学的有意差のある相関を認めなかった。また免疫チェックポイント関連分子の発現と予後について解析したが統計学的有意差のある相関を認めなかった。 卵巣癌におけるMSIの頻度は比較的低く、免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor: ICI)単剤では効果は限定的と考えられたため、ICIとその他の分子標的薬・抗癌剤との併用効果を検討するため、マウスモデルによる複合免疫療法の検討を開始した。現在卵巣癌における臨床試験で、ICI併用療法、VEGF阻害剤+ICI、PARP阻害薬+ICIといったICIを含む多剤併用療法が行われている。中でも近年の報告からHRD状態でない場合、PARP阻害薬とICIの併用が有効である可能性があることがわかり(Kent W.Mouw.British Journal of cancr, 2018)、これらを特に重要視し新マウスモデル案を提案した。すなわち、免疫系正常マウスに化学療法耐性株(プラチナ耐性株)に加え、poly ADP-ribose polymerase(PARP)阻害薬耐性株、vascular endothelial growth factor(VEGF)阻害薬耐性株を投与し、多剤併用療法での腫瘍縮小効果の検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①卵巣癌においてMSI、また免疫チェックポイント関連分子の発現と予後について解析したところMSI-High群はMSS群と比較し、無病生存期間(progression-free survival:PFS)、全生存期間(overall survival: OS)ともに統計学的有意差のある相関を認めなかった(PFS:p=0.156, OS:p=0.464)。またそのほかの免疫チェックポイント関連分子の発現においても統計学的有意差のある相関を認めなかった。 ②卵巣癌においてはICI単剤では効果は限定的と考えられたため、新マウスモデルによる複合免疫療法の検討を開始した。1)プラチナ耐性株: HRD(-)の状態であり、PARP阻害薬単剤では効果がないが、PARP阻害薬ICI併用により奏効率上昇の可能性がある。2)PARP耐性株:PARP阻害薬使用中に再燃した症例はICIが奏効する可能性がある。3)マウス卵巣癌細胞株:PARP単剤またはプラチナ単剤よりもICI併用により奏効率上昇の可能性がある、以上を考慮し実験を進めた。 1. 薬剤耐性株を作成した。親株:HM-1:マウス卵巣癌細胞株に対しPOLEノックアウトしA02(POLE WT)、H04,A06(POLEホモ変異)を作成した。IC50(CDDP)A-02:0.71μM,A-06:0.82μM,H-04:0.94μM、IC50(CBDCA) A-02:5.555μM, A-06:6.389μM, H-04:8.779μM、IC50(Olaparib)A-02:14.99μM,A-06:12.29μM, H-04:10.41μMとなった。さらにそれぞれの細胞株での増殖能を確認した。 2.それぞれの細胞株を免疫状態が正常なマウスに投与したところ、プラチナ耐性、PARP阻害薬耐性マウスの生存期間延長を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
【1. 複合免疫療法による腫瘍縮小効果の検討】当初の予定通り免疫系が正常なマウスB6C3F1.マウスへの卵巣癌細胞株投与を実施中である。引き続き、マウスにできた腫瘍組織を用いてMMR蛋白、PD-L1、PD-CD8発現を免疫染色で評価する。下記の薬剤投与量、スケジュールで多剤併用療法での腫瘍縮小効果を比較する予定である。 抗PD-1抗体:day16、23、30、37に10mg/kg or mouse IgGを腹腔内投与。CDDP:週2回、5mg/kgを腹腔内投与。PARP阻害剤:day3から連日50mg/kgのOlaparibを腹腔内投与。抗CTLA4抗体:day2,5,8に150μg/mouseを腹腔内投与。VEGF阻害薬:週2回、5mg/kgを腹腔内投与。 【2. マウスエクソーム解析】CDDP耐性株をさらに継代し、マウスエクソーム解析を行い、ultra-mutated phenotypeとなっているか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度で予定した物品費を超過しないように必要物品を購入したため、物品費の余剰分は、2020年度でとどこおりなく使用する予定である。また、その他で使用予定であった論文修正および投稿費について、論文掲載後に使用予定である。
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