2020年度の研究では、今後胎生期の低栄養と出生後の栄養環境が生殖機能に及ぼす影響を検討する上で、モデルとなる動物の作製を実施した。これまでの研究で、ラットにおいて胎生期の低栄養が出生後の肥満を引き起こしやすいこと、ならびにこれは高アンドロゲン環境で顕著になることを明らかにした。一方、この検討は生理的濃度を超える高アンドロゲン環境下にて実施されたことが課題点であった。そこで、アンドロゲンの投与法を工夫することで、実際の病態と近い環境を再現することを試みた。具体的には、これまではアンドロゲンの原末を充填したシリコンチューブを皮下留置する方法を用いていたが、本検討ではoilで希釈したアンドロゲンを充填したチューブを留置した。その結果、高アンドロゲンに伴う生殖および栄養代謝学的表現型は維持しつつ、これまでのモデルで認めていた子宮や卵巣の萎縮といった変化は引き起こされないことを確認した。すでに述べた通り、これまでのモデルではアンドロゲン濃度が過剰になりがちで、これによる影響が胎生期の低栄養による影響を上回っていたと考えられる。言い換えれば、本来認められるはずの変化がマスクされていた可能性が否定できないと思われる。今回確立したモデルを用いれば、このような事象を回避することができ、胎生期の低栄養がアンドロゲン作用に及ぼす影響についてより詳細な検討ができると予想される。今後はこれらについて検討を進める予定である。
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