研究課題
2020年度は多嚢胞性卵巣症候群の診断における、血中AMH値の有用性について情報収集を行った。その結果、欧米女性を対象とした検討において、PCOSでは正常女性に比べて血中AMH値が高いこと、およびAMHは高い感度・特異度をもって単独でPCOSの診断精度を向上できるとの情報が得られた。また、これまでPCOSの診断に広く用いられてきた多嚢胞性卵巣所見について、超音波機器が発達した現在においては過剰診断される恐れがあること、およびAMHを卵巣所見の補助として用いることで、より客観性に優れた診断が可能となるとの情報が得られた。これらの情報をもとに、我々がこれまでの研究で得た結果について再解析を行った。その結果、日本人女性では、AMHを単独で PCOSの診断に用いた場合には十分な感度・特異度を得ることはできないことが判明した。一方、AMHと他の所見を組み合わせることでPCOSの診断精度を向上できることが確認された。日本のPCOS診断基準では、月経異常、血中ホルモン値の異常、および超音波検査による卵巣多嚢胞性変化が必須項目とされているが、このうち卵巣多嚢胞性所見は超音波機器の性能や検者の主観によって影響を受けやすいことが問題視されてきた。AMHは客観性に優れ、また卵巣機能を強く反映することから、今後卵巣多嚢胞性所見に置き換わる、もしくは補強する要素として必須項目の中に組み込む必要性があると考えられた。
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