研究課題
本年度は,卵巣組織の収集と組織解析を行った.また,卵巣組織中の原始卵胞の抽出を試みた.悪性腫瘍で卵巣を摘出する有月経女性および性成熟期の子宮内膜症女性からインフォームドコンセントを得て卵巣組織を採取した.組織の一部をブアン固定のうえパラフィン包埋して薄切切片を作成した.卵巣組織における巣状の原始卵胞を有する切片を抽出し,卵胞周囲の間質細胞の形態評価を行った.また,卵胞周囲の顆粒膜細胞および間質細胞の増殖性をKi-67免疫染色で評価し,間質細胞の形態変化(核が腫大し細胞質が厖化)と原始卵胞から一次卵胞への移行および間質細胞と顆粒膜細胞の増殖性との関連を検討した.一次卵胞へ移行を開始した原始卵胞を有する卵胞巣と休止している原始卵胞のみで校正されている巣を比較した.フィブリリン1,2および3の卵巣組織中の発現を免疫組織化学的手法により解析した.卵巣組織中の原始卵胞周囲の間質細胞には,線維状の形態から核が厖化し細胞が腫大している形態へ変化しているものが認められ,これらは原始卵胞の一次卵胞への移行と考えられる周囲顆粒膜細胞の円柱化とKi-67核陽性を示す細胞の増加と関連していた.また腫大した周囲間質細胞ではKi-67陽性細胞の増加が認められた.この2つの異なる形態の間質細胞の有無と原始卵胞の発育およびそれら周囲の細胞外マトリックスにおけるフィブリリン蛋白の組織中発現を現在解析中である.摘出された卵巣から皮質組織を分離して細切し,組織中の原始卵胞を抽出した.形態的に初期卵胞であることは確認出来たが,原始卵胞と判別できないものも認められた.卵巣組織中から十分な量の原始卵胞を抽出するまでには至っていない.
4: 遅れている
子宮内膜症を有し,かつ巣状の原始卵胞を有する正常卵巣組織の採取が難しいため,疾患が組織中の卵胞に与える影響を評価することが難しい.また,原始卵胞が十分遺残している年齢の卵巣組織を得ることが難しく,また組織中から効率よく形態良好な原始卵胞が抽出出来ていない.
当科で保存している組織アーカイブから臨床背景の情報が把握できるもの,あるいは原始卵胞が確認できるものを選択して検討を行う.組織から原始卵胞を抽出する際のコラゲナーゼ処理等の適切な条件設定を検討する.
本年度は組織検体の収集と用手的組織細切による卵胞抽出の予備実験に充てたため,組織細切機を購入しないで実験が可能であるか試みた.次年度は実験手技の改良とその結果として必要であれば細切機器の購入を考慮する.本年度までは実験の使用に堪えうる卵巣組織の収集が予想よりも少なかったが,今後収集組織数が充足してきたら組織染色や組織抽出処理あるいは培養に必要な薬品等が必要となるため,次年度にはそれらの購入に充てる予定である.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (2件)
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