研究課題/領域番号 |
18K09294
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
北島 道夫 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (50380845)
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研究分担者 |
村上 直子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (30768718)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 子宮内膜症 / 卵巣 / 卵巣間質 / 細胞外結合組織 |
研究実績の概要 |
2020年度は,前年度に引き続き卵巣間質組織の細胞構成およびその特性の解析を行った.細胞外基質であるフィブリリン1,2および3の卵巣間質における発現動態の解析を継続して行ったが,子宮内膜症のない正常卵巣組織および子宮内膜症性卵巣嚢胞を有する卵巣組織との間で疾病の有無による一定の傾向を持った有意差は認められなかった.また,前年度に卵巣間質における形質転換のマーカーとして検討したα-SMAの発現動態を引き続き検証した.正常卵巣組織におけるα-SMAは発育卵胞の顆粒膜細胞周囲の細胞で認められたが,これらは血管新生とともに間質の線維性細胞が莢膜外層細胞などの卵胞発育に与する細胞への形質転換を示していると考えられた.一方,子宮内膜症等による局所の炎症を伴う卵巣組織においては,減少する卵胞周囲の間質細胞とα-SMAの発現低下が関連していることが認められた.これらは卵胞発育を制御している周囲間質細胞の形質転換が炎症により低下し卵巣予備能低下に関連している可能性を示唆しているものである.現在,卵胞周囲間質細胞におけるα-SMAの発現と細胞外結合組織のコラーゲン発現との関連についての検討を継続している. 2020年度は良性腫瘍や不妊症を呈する子宮内膜症女性の手術数が社会的状況により低下し,研究に供することができる卵巣組織が十分には得られなかった.一部の検体卵巣組織から原始卵胞を抽出し,原始卵胞と初期発育卵胞との識別に関する検討を継続した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していた卵巣組織中のマイクロフィブリルの発現を検討したところ,種々のクローンの一次抗体を使用してみたが,いずれも疾患特異的な発現パターンを得ることはできなかった.一方で,卵胞周期の間質細胞におけるα-SMAの発現に着目し,血管平滑筋と異なる炎症に伴う発現動態の変化が存在することが示唆された.しかしながら,子宮内膜症を有する卵巣組織での初期発育卵胞での解析が十分に行うことができていない. 2020年度は社会状況から良性疾患や不妊症での外科治療例が少なくなったため,子宮内膜症が存在し局所炎症を伴う卵巣組織検体を収集することが容易でなかった.また,子宮内膜症を有する組織で効率よく形態良好な原始卵胞あるいは初期卵胞を抽出する手技,あるいは原始卵胞と初期発育卵胞との判別手技について追加検討を模索している.
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今後の研究の推進方策 |
卵巣間質組織でのα-SMAの発現パターンについて,正常卵巣組織と子宮内膜症が存在する卵巣組織での相違を検討してデータをまとめる.子宮内膜症による局所炎症による間質組織の変化と卵胞周囲の間質細胞の性状の変化との関連ならびにその周期の細胞外コラーゲンの発現変化を追加検討する. 組織から抽出された原始卵胞および初期発育卵胞における卵子周囲の細胞の形態的変化を組織における変化と比較検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は社会的な状況から手術症例が減少し,当該年度に予定した検討ができなかったため,予算に余りが生じた.次年度は,組織検討用の試薬や論文投稿に必要な経費,人件費および謝金に充てる予定である.また,本年度は学会出張等が一部不可能となったため予算の執行額が少なくなった.可能であれば国内学会あるいはウェブでの国際学会に参加して研究内容の発表・検討を行いたい.
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