研究課題/領域番号 |
18K09297
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
野村 弘行 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50327590)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 卵巣癌 / 薬物療法 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
本研究は、難治性である進行・再発卵巣癌(卵管癌、原発性腹膜癌を含む)に対するより有効かつ安全な治療法を探索、検証すると同時に、腫瘍の分子生物学的特徴に応じた個別化された治療適用の手段を模索するものである。 初回治療として、現時点で最も強力と考えられるパクリタキセル毎週投与+カルボプラチン3週毎投与に血管新生阻害作用を有する分子標的治療薬ベバシズマブを併用した新規レジメン(ddTC+Bev療法)を術前化学療法として用いる治療戦略を考案し、本治療を施行した患者集団を集積した。この被験者集団における効果、安全性、有効な患者集団の抽出にむけたデータ解析を開始した。再発卵巣癌に対して日本人における有効性や安全性の情報が乏しい化学療法とベバシズマブの併用について、この治療の対象群を用いた有効性、安全性、有効な患者集団の探索に関するデータ解析を行い終了した。卵巣癌に対する標準療法であるパクリタキセル+カルボプラチン療法の副作用(主に好中球減少)と相関するSNPを見出し、その中から治療後の予後とも相関し得るSNPの絞り込みを行いえた。低侵襲かつ正確に卵巣癌の存在診断および分子生物学的特徴を判定するための手法として、血液中のcirculating tumor DNAによりdriver遺伝子変異の検出を行うリキッド・バイオプシーの手法を探索し、実際の症例に適用することでその有用性を確認した。この手法を体腔液に応用することを目途に、体腔液中腫瘍細胞からの初代培養法の条件を探索した。治療選択の個別化のための網羅的ゲノムシークエンスによる治療標的の探索につき、対象症例を選定し着手した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最大限の腫瘍減量を達成するための強力かつ忍容性の高い薬物療法の開発につき、予定通り症例集積とデータ収集ができており、データ解析に着手することができた。再発卵巣癌に対する薬物療法の安全性、有効性の解析については、予定通りデータ解析が終了し論文公表にむけた準備が完了した。薬物療法の治療効果を早期に判定するための分子的・遺伝的バイオマーカーの探索としては、有望なSNPの絞り込みができている。血液中のcirculating tumor DNAによる早期診断手法については、おおむね確立ができた。網羅的ゲノムシークエンスによる治療標的の探索は、研究の着手まで行えている。
|
今後の研究の推進方策 |
データ収集が完了している事項については、データ解析作業を引き続き行い、公表に向けた作業を行う。SNPやcirculating tumor DNAといったバイオマーカーに関しては、validationの在り方や、効率化、一般化のための手法の工夫を模索、検討していく。網羅的ゲノムシークエンスについては、結果の収集とデータ解析に着手する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究計画はおおむね計画通りに進捗したが、未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。本年度分の残額を次年度分に繰り下げて、当初の研究計画にそって研究を遂行する予定である。
|