研究課題
本研究は、難治性である進行・再発卵巣癌(卵管癌、原発性腹膜癌を含む)に対するより有効かつ安全な治療法を探索、検証すると同時に、腫瘍の分子生物学的特徴に応じた個別化された治療適用の手段を模索するものである。初回治療として、現時点で最も強力と考えられるパクリタキセル毎週投与+カルボプラチン3週毎投与に血管新生阻害作用を有する分子標的治療薬ベバシズマブを併用した新規レジメン(ddTC+Bev療法)を術前化学療法として用いる治療戦略を考案し、本治療を施行した患者集団を集積した。この被験者集団における効果、安全性、有効な患者集団の抽出に関するデータ解析を完了し、結果の公表を行った。本治療では、 主要評価項目である中間期腫瘍減量手術(IDS)における手術完遂度が設定した閾値有効率を上回り、臨床的有効性を示す結果が得られた。また、有害事象、周術期合併症は許容範囲内であり、本治療の安全性が確認された。再発卵巣癌に対して日本人における有効性や安全性の情報が乏しい化学療法とベバシズマブの併用について、この治療の対象群を用いた有効性、安全性、有効な患者集団の探索に関するデータを収集し、結果をまとめた。日本人における有効性は海外での既報と同程度であり安全性は確認されたものの、一部の有害事象は日本人において高いことが判明した。低侵襲かつ正確に卵巣癌の存在診断および分子生物学的特徴を判定するための手法として、血液中のcirculating tumor DNAによりdriver遺伝子変異の検出を行うリキッド・バイオプシーの手法を実際の症例に適用し、有用性を確認した。治療選択の個別化のための網羅的ゲノムシークエンスによる治療標的の探索につき、卵巣がん症例を対象に解析をおこない、actionableおよびdruggableな遺伝子発現頻度を確認した。
3: やや遅れている
最大限の腫瘍減量を達成するための強力かつ忍容性の高い薬物療法の開発につき、データ収集と解析が完了し、学会での結果の公表、論文作成と投稿を行った。再発卵巣癌に対する薬物療法の安全性、有効性の解析については、予定通りデータ解析が終了し論文にて公表を行った。血液中のcirculating tumor DNAによる早期診断手法については、おおむね確立ができた。網羅的ゲノムシークエンスによる治療標的の探索は、データ解析が終了し、その結果を公表した。
論文公表に向けた研究の総括作業を行う。
本年度の研究計画は、感染症蔓延の影響があり一部の研究計画で進捗が遅れ、使途の変更を余儀なくされた。未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。本年度分の残額を次年度分に繰り下げて、当初の研究計画にそって研究を遂行する予定である。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件)
Jpn J Clin Oncol
巻: 51 ページ: 54-59
10.1093/jjco/hyaa140
Cancer Med
巻: 9 ページ: 7407-7417
10.1002/cam4.3383
東海産科婦人科学会雑誌
巻: 57 ページ: 247-252