研究課題
卵巣癌の初回化学療法はプラチナ製剤が主体であるが初回治療終了後から6カ月以内の再発はプラチナ製剤抵抗性と判定される。化学療法抵抗性の難治性卵巣癌症例はセカンドライン以降の薬剤が乏しいうえ、完治が難しいという理由から緩和医療やQOLの向上および生存期間の延長を目的とする治療がなされているのが現状である。そこで本研究は難治性卵巣癌の癌性腹水からゲノム解析を実施し、得られたデーターから患者個人に適合した薬剤感受性試験を行うことで難治性卵巣癌に対して奏功性の高い個別化治療法へと発展させることを目指している。検討内容として癌性腹水を集細胞法にて分離した腫瘍細胞検体を次世代シークエンサー解析し再発に関連するドライバージーンを検出。ドライバージーンに適した既存薬剤の薬剤感受性試験(DSRT)を行い化学療法薬剤の奏効性を確認する。解析結果は実臨床への妥当性を各専門分野の意見により判断することを予定している。そこで本年度はDSRTの基礎的検討を中心に研究を実施した。すでに実臨床にて使用されている既存の36種の化学療法薬のDSRTを卵巣癌由来の培養細胞株を使用し2次元平面 (2D)培養および3次元立体培養(3D)の2系列を行って比較した。培養細胞を96wellplateに播種した時点をDay0とし、Day1に薬剤を添加、Day3にATPアッセイにて吸光度を測定しDSRTはIC50値を基準にして細胞増殖能を比較した。その結果、2D培養は3D培養に比較して薬剤の奏功性が高い傾向にあった。次に卵巣癌発症例より患者同意の元で採取された患者腹水を用い同様の比較を行った。検討の結果、3D培養下のIC50値は2D培養に比較し腹水検体採取時の化学療法奏功性を正確に反映した。これらの結果から3次元培養条件の薬剤感受性試験は患者検体採取時の化学療法奏功性を反映した結果が得られている可能性が高いと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
培養条件の違いによる薬剤感受性試験の奏効の違いについて解明した。また、患者腹水を用いた検討のなかで、希少疾患である悪性腹膜中皮腫症例より樹立細胞株を確立し、論文とする成果を挙げた。
現在までに実施している培養条件下で得られた結果を実際の臨床検体を用いた薬剤感受性試験へと応用する。さらに現行法の三次元培養法に加えて、生体外臓器であるオルガノイドの作成により臨床状態を反映した解析を追加して検討する予定である。
(次年度使用額が生じた理由)次世代シークエンサーが設置されている解析室が閉鎖され解析中止状態となっており解析に掛かる費用や試薬の購入を保留しているため次年度使用額が生じた。(次年度使用計画)解析保留としている次世代シークエンサー解析用のmulti-gene panelの購入を主体に解析に必要な消耗品および試薬類の購入を予定している。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (4件)
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