研究課題/領域番号 |
18K09299
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
寺尾 泰久 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (00348997)
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研究分担者 |
野島 美知夫 順天堂大学, 医学部, 教授 (50198595)
金田 容秀 順天堂大学, 医学部, 助教 (60445517)
太田 剛志 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (80407254)
荻島 大貴 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (90327784)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 産婦人科 / 子宮体癌 / 個別化医療 / リンパ節転移 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
子宮体癌の再発低リスク症例ではリンパ節郭清は治療的意義に乏しい。したがって子宮体癌ではリンパ節転移リスクを評価し、リンパ節郭清適用の個別化が必要である。申請者は術式適用判断の基準となるリンパ節転移リスク診断マーカーを同定するため、子宮体癌組織RNAをCAGE法により網羅的に解析した。この結果、リンパ節転移診断マーカーとして有用な2遺伝子(SEMA3DとTACC2新規アイソフォーム)を同定した。本研究の目標の一つとして転移診断マーカー遺伝子の機能解析を設定した。 マーカーの1つは、性ホルモン関連腫瘍抑制因子であるTACC2新規アイソフォームの転写産物(mRNA)である。先行研究において、新規アイソフォームの全塩基配列の同定を試みた結果、同じ新規転写開始点を有するTACC2の転写産物が複数確認された。そこで最も転移と相関するアイソフォームを同定することは、マーカーの精度向上およびリンパ節転移機能解明に大きく寄与しうると考えられた。しかしながら、コロニーアイソレーションによる各転写産物ごとの塩基配列決定では、網羅的配列決定は困難であることが示唆された。そこで、単一分子で長鎖塩基配列(最大100k塩基)を決定することを可能にするOxford Nanopore seqeuncer(MinION)を使用し、ロングリードによる網羅的塩基配列決定によるアイソフォームの同定を試みた。 この結果、800種類を超える新規アイソフォームを新たに同定し、その複雑性は細胞株、正常子宮内膜組織、子宮体癌組織の組織の違いによらず維持されることを明らかにした。すなわち、ロングリードシーケンサーによる網羅的解析という物理的なブレークスルーによって、従来考えられてきた以上のスプライシングバリアントが実際に存在し、転写制御あるいは複雑な転写産物の混合体によるさらに下流の機能発現は制御されていることを明らかにしえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最も転移と相関するアイソフォームを同定することは、マーカーの精度向上およびリンパ節転移機能解明に大きく寄与しうると考えられ、スプライシングバリアントであるアイソフォームの全容解明を試み、新たな知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
多施設多数検体によるリンパ節転移診断マーカーの精度検証に関しては、研究担当者 太田剛志を代表者とする「子宮体癌の個別化医療選択に資する臨床的特性に相関する遺伝子の同定」(MEXT科研費基盤C 17K11296)において収集された、多施設多検体の残検体を用いて診断マーカーの診断精度検証を行う。現在検体として300症例弱が確保されており、引き続き定量的RT-PCRを実施し、各症例の病理学的整合性の確認を含む診断精度を検証を実施する。 診断マーカー遺伝子の機能解析に関しては、本年度の結果を踏まえて、もう一つのマーカー遺伝子であるSEMA3Dでも同様のスプライシングバリアントが存在するかの検証を検討する。研究の進捗状況によっては、マーカー遺伝子のcDNA を発現ベクターに組み込み形質導入し過剰発現細胞を作製後、その細胞特性(細胞特性・運動能・浸潤能等)の変化を観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マーカー遺伝子の有効性検証に関しては、30年度は検体収集が完了し全検体での遺伝子発現検証を開始した状況にある。本年度は繰り越し金も用いて全検体での遺伝子発現検証の完遂を目標とする。
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