microRNA(miRNA)の発現パターンは、がんを含む種々の疾患においてダイナミックに変化するが、診断・治療に関するバイオマーカーとしても有望視されている。臨床上利用される子宮体癌に対する腫瘍マーカーとして血清中CA125値があるが、その感度や特異度は決して高くない。本研究では、有用な特異的な腫瘍マーカーの存在しない子宮体癌の早期診断や効率的なフォローアップを可能とするような血清中miRNAの探索・同定を行う。子宮体癌患者における循環血液中のmiRNAを網羅的に解析し、発現量が大きく変化しているmiRNAとしてmiR-565-5p、miR-633、miR-1275およびmiR-4306を同定した。これらと進行期・予後・治療に対する奏効性および組織型などとの相関性を調べ、それぞれの末梢血液中の循環miRNAの臨床的意義を検討した。miR-565-5p、miR-633、miR-1275およびmiR-4306の循環血液中の発現量は、組織型とは相関しなかったが、進行期・予後・治療に対する奏効性については、検体数の問題もあり有意差を認めなかったものの相関性が示唆された。また、miR-565-5p、miR-633、miR-1275およびmiR-4306の候補標的遺伝子をin silico解析により検索し、3’-UTRを含む候補標的遺伝子配列をルシフェラーゼコン ストラクトに組み込み、子宮体癌細胞株を用いてmiRNA強制発現系でリポーターアッセイを行う予定であったが、コロナ禍により研究業務遂行が困難であったこともあり、これらについては目立った研究成果が得られなかった。
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