研究課題
2018,2019年度はHPV16E7発現乳酸菌製剤に対する臨床的有効性の個体差としてCIN病変のE7蛋白質発現の測定系樹立と臨床検体の測定を行った。2020年度は我々が樹立したiPS細胞由来の子宮頸部組織幹細胞様細胞(induced reserve cell:iRC)の解析を実施した。iRC細胞にHPV16またはHPV18のE6/E7癌遺伝子を導入した細胞株(iRC-16、iRC-18)を樹立し免疫不全マウスに接種したところ、それぞれ腫瘍を形成した。HPVの癌遺伝子E6/E7を導入しただけで腫瘍を形成したのは、先行研究ではなかった現象である。これにはiPS細胞由来の幹細胞特性が関与していると考えられた。さらにHPV16とHPV18の比較をしたところiRC-18腫瘍では浸潤性腺癌を形成した。子宮頸部腺癌の約50%はHPV18が原因でありこれを実験的に証明したのは世界初である。HPV癌遺伝子を導入していないiRC-contでも腫瘍形成したが、これは未分化腫瘍であった。これに対してiRC-18は浸潤性腺癌となった。iRC-16にも腺系上皮を認めたが、過形成程度の病変であり癌の形成は見られなかった。腫瘍増殖速度もiRC>iRC-18>iRC-16の順であった。iRC-16は、腫瘍形成速度がiRC-18よりも明らかに遅く、浸潤性癌の形成には至らなかった。iRC-18が幹細胞としての特徴を保持しながら、腺系上皮に分化したことを意味する。上皮系、幹細胞系、腺系の各種マーカーについて、iRC-18, iRC-16腫瘍の免疫染色を行ったところ、iRC-18で、幹細胞マーカーが陽性となった。同じ腫瘍内でも、浸潤性腺癌、上皮内腺癌、正常腺上皮が混在していた。HPV18は幹細胞特性を保持できる性質があり、それがヒトでの子宮頸部腺癌につながり、また予後不良の臨床特性と合致すると考えられた。
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