研究課題/領域番号 |
18K09304
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
竹下 俊行 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (60188175)
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研究分担者 |
桑原 慶充 日本医科大学, 医学部, 准教授 (40373013)
根岸 靖幸 日本医科大学, 医学部, 講師 (50644580)
小野 修一 日本医科大学, 医学部, 講師 (80465301)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中隔子宮 / 不育症 / ケモカイン / ケモカインレセプター |
研究実績の概要 |
子宮形態異常の一つである中隔子宮は流産・不育症と深い関係がある。臨床では中隔子宮以外に不育症のリスク因子が認められない場合手術を選択する事が多いものの、その流産発症メカニズムには一定の見解はない。本研究では、子宮中隔部における各細胞群のミクロ的な免疫生化学的解析とともに、3D 超音波法によるマクロ的な血流血管分布解析を行う事によって、中隔子宮における流産発症のメカニズム解析を目的とする。 本研究期間において、申請者らは子宮鏡下中隔切除術で得られた中隔部を細断し、ここに含まれる免疫細胞群の動態をフローサイトメーター、免疫染色法を用いて解析した。なおこれら免疫細胞群を、子宮筋腫の適応で子宮全摘となった肉眼的に正常と思われる子宮内膜/筋層(間質部)を対照とした。その結果、正常子宮間質部に比べ中隔部では炎症環境を惹起するCD141陽性樹状細胞(DC)の有意な集積低下が認められた。次にこの要因を検討するためDC上のケモカインレセプターを調べたところ、正常子宮間質部、中隔部のDCは両者ともにCCR1、CCR5は陽性であったものの、24時間の細胞培養実験では、正常子宮間質部に比して中隔部からのケモカインRANTES、MIP-3βの産生が有意に低かった。以上より、1) 中隔部では正常子宮間質に比してケモカイン産生能が低く、2) これによりCD141陽性DCの集積不全が引き起こされる可能性が示唆された。 近年着床や妊娠初期の絨毛外栄養膜細胞の浸潤には、適切な炎症が必要であるとの報告がなされている。本研究で認められたCD141陽性DCが欠如した中隔部はこの適切な炎症が惹起できず着床不全、流産発症の“場”になる可能性がある。中隔子宮に対する手術療法はこれら着床、妊娠維持に不適当な部分を取り除くこととなり、本研究の結果は中隔子宮に対する手術療法の有益性を示唆するものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
理由:現在中隔子宮における免疫学的解析の結果、以下の各学会報告を行っている。第33回日本生殖免疫学会(演題名「Septate uterus and recurrent pregnancy loss:An immunological perspective」、東京、2018)、14 th World Congress of theInternational Society for Immunology of Reproduction. 演題名「Immunological aspectof uterine septum in women with recurrent pregnancy loss」奈良、2019)、第72回日本産科婦人科学会(演題名「中隔子宮と流産-免疫学的メカニズムから考察する」、東京、2020)。またこれら内容を論文としてまとめている。Title: Distribution of dendriticcells in the septate uterus: an immunological perspective, 2020, American Journal of Reproductive Immunology, DOI: 10.1111/aji.13241. 以上より、本研究の進捗状況は、計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの中隔子宮における免疫学的解析により、中隔部には妊娠初期に必要な炎 症が惹起されず、流産発症の母地になる可能性が示唆された。今後は、中隔部にお けるサイトカイン、ケモカインの更なるプロファイル解析、さらに3D超音波法を用いた子 宮中隔部の血流、血行動態の解析を行う予定である。
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