研究実績の概要 |
これまで行ってきた原始卵胞の非侵襲的可視化の研究を基盤として、本技術の臨床医療への応用を目的に研究を開始した。これまで、LLテック社の機器(ライトスキャナー、FFOCT)を用いて研究を行ってきたため、本研究もこの機器を用いて行う予定であったが、企業の方針によって国外に機器が移動されたため、当初予定していた実験が実施不可能となった。そのため、改めて光学系に特化した企業を再度選定し、既存の機器を改良して使用するため、機器の共同開発から開始した。第一の目標としては、卵胞を視認する機器の作成とした。まずは、その際に用いる光干渉断層計機器(新規OCT機器)を用い、卵胞に対する本機器の安全性評価を行った。その結果、新規OCT機器を用いてマウス卵巣を撮像したが、卵胞数はコントロール群と比較して有意差はなく、卵子および顆粒膜細胞の遺伝子(GDF9, FSHR, CYP19a)発現も異常を認めなかった。また、本機器の撮像後にレシピエントマウスの卵巣組織に対して同所性卵巣移植を行ったが、卵巣組織の生着には特に異常を認めず、本機器の安全性が示された。さらに有効性に関しては、解像度はライトスキャナーに劣るものの、二次卵胞ならびに胞状卵胞の可視化が可能であり、組織学的評価との比較により、二次卵胞ならびに胞状卵胞数測定の正確性が担保されることが示された。一方、原始卵胞ならびに一次卵胞の可視化は困難ではあるものの、設定条件によっては一部評価可能であった。さらにレンズならびに組織の設置方法について工夫を行い、より高感度の機器の作成を進めた。今後は、遠赤外線の波長、組織固定方法、画像フィルターなどの改良、卵胞検出システムの構築を進め、卵巣の撮像に最適化された機器を開発するとともに、その機器を用いて組織選択を行った卵巣組織移植法の有効性について検証を継続してゆく方針としている。
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