研究実績の概要 |
正常単胎妊娠23例を対象として、妊娠中期(妊娠20-24週)および後期(妊娠33-37週)における46検体における腟細菌叢の解析を行った。菌叢解析には次世代シークエンザーを用い、菌組成の比較検討を行った。解析には、各検体の95%以上を占める上位3位までの菌種を対象とした。 その結果、以下の点を明らかにした。(1)すべての検体でLactobacillusを検出し、頻度順にL.cristatus, iners, gasseri, genseniiの4種類であった。(2)最上位の菌種がLactobacillusであったものは、41検体(89.1%)で、残り5検体(10.9%)はGardnerella vaginalisであった。(3)G.vaginalisやAtopobium vaginae等のいわゆる「悪玉菌」は、12検体(26.1%)で検出され、いずれの検体においてL.gasseriあるいはinersが確認された。(4)L.crispatus, genseniiが検出された検体では、前述の「悪玉菌」は認められなかった。(5)妊娠中期と後期との比較で、20症例(87.0%)で最上位の菌種に変化を認めなかった。一方、残り3症例(13.0%)では、最上位の菌種がgasseri→iners, gensenii→crispatus、crispatus→genseniiへと変化した。 以上より、正常妊娠においては個体が有する優勢菌種は妊娠中期から後期にかけてほとんど変化しないこと、(2)Lactobacillusの中でもcrispatusとgenseniiは、菌叢の安定性に寄与していることが明らかとなった。 一方、腟細菌叢に「悪玉菌」を有する症例の臨床背景を検討したところ、それまでに帝王切開術、子宮内膜ポリープ切除術等の子宮内膜に損傷を及ぼす手術歴を認めることがわかった。このことから、子宮手術歴と妊娠中の腟細菌叢組成の間に関連性を有することが示唆された。
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