研究課題/領域番号 |
18K09308
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山口 建 京都大学, 医学研究科, 講師 (20378772)
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研究分担者 |
馬場 長 岩手医科大学, 医学部, 教授 (60508240)
万代 昌紀 京都大学, 医学研究科, 教授 (80283597)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / リキッドバイオプシー |
研究実績の概要 |
卵巣明細胞癌は子宮内膜症の中から発癌することが知られている。よってまずは卵巣明細胞癌に特異的なDNAメチル化領域を同定することとした。卵巣癌組織85検体、正常卵管・卵巣表層上皮細胞8検体、卵巣癌細胞株46株、正常卵管・卵巣表層上皮細胞株4株を用いて網羅的DNAメチル化解析をおこなった。卵巣癌組織、卵巣癌細胞株に共通して明細胞癌が非明細胞癌よりDNAメチル化が20%以上(β値が0.2以上)高く、p値が0.01以下の遺伝子は25個あった。逆に明細胞癌が非明細胞癌よりもβ値が0.2以上低く、p値が0.01以下の遺伝子は6個あった。また、機能的に重要と思われ、DNAメチル化によって制御されている遺伝子を卵巣癌細胞株を用いて、以下の基準によって抽出した。1) t検定でp値が0.01未満、2)明細胞癌と非明細胞癌との間でβ値が0.2以上(DNAメチル化が20%以上)異なる、3)発現マイクロアレイと網羅的DNAメチル化のデータから発現とβ値が有意に逆相関を示す(p<0.05)。この解析により、非明細胞癌と比較して明細胞癌において低DNAメチル化により活性化している遺伝子は22遺伝子、逆に高DNAメチル化により抑制されている遺伝子が276遺伝子あった。明細胞癌において低DNAメチル化により活性化している遺伝子は22遺伝子はHNF1B転写に関わる遺伝子が含まれ、高DNAメチル化により抑制されている遺伝子が276遺伝子はERネットワークに含まれる遺伝子が含まれていた。これらのHNF1B転写ネットワークやERネットワークの遺伝子は、それぞれ協調してDNAの低メチル化、高メチル化が起こっていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
腫瘍と正常とのペアで16検体を、腫瘍のみを23検体を、エクソームシーケンスに提出した。RNAシークエンスは発現解析に用いるが、遺伝子変異を類推することが可能であるため、明細胞癌40例、高異型度漿液性癌13例、明細胞+類内膜癌1例、正常卵巣表層上皮や正常卵管上皮5例をRNAシークエンスに提出した。 検体回収の遅れがあること、データ解析の信頼性を評価することに時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
検体の回収を引き続き継続して検体数を増やしていきたい。また、データ解析は京都大学内のバイオインフォマティックス部門に相談することで推進したい。 また、卵巣明細胞癌に特異的な遺伝子を同定するのみならず、卵巣癌の様々な組織型に共通するバイオマーカーを探索したい。ゲノムワイドなDNAメチル化データは以下の3データセットから抽出したいと考えている。①卵巣癌細胞株30株を用いて脱メチル化剤であるデシタビン投与による網羅的発現解析と網羅的DNAメチル化解析を用いたデータ、②卵巣癌細胞株32株を用いて網羅的発現解析と網羅的DNAメチル化解析のデータ、③卵巣癌検体508組織を用いたTCGAの網羅的発現解析と網羅的DNAメチル化解析のデータ。これらの3データを統合して解析することで、DNAメチル化の程度のみならず、実際に発現に関わる機能的にも重要な遺伝子を同定することが可能と考える。 SNV解析に関しては、現在提出中のエクソームシークエンスデータ、RNAシークエンスデータから同定したいと考えている。データはサンプル数が多いほど精度が上がるため、他施設のエクソームシークエンスやRNAシークエンスデータセットを用いることを検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に外国出張旅費の支出を予定していた為、3月末に旅費が確定し差額が生じた。差額は次年の旅費として計上する。
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