各種頭頸部癌細胞株を用いた解析により、上咽頭癌細胞株の細胞表面にCD70が発現していることが明らかとなった。一方、CD70のレセプターであるCD27に関しては、解析したすべての細胞株において細胞表面に発現を認めなかった。上咽頭癌細胞株でCD70の発現を認めたことから、上咽頭癌患者生検組織におけるCD70の発現を検討したところ、71%の患者で腫瘍細胞に発現を認めた。また、78%の患者で腫瘍周囲に浸潤しているリンパ球にCD27の発現を認めた。CD70およびCD27の発現と各種臨床因子との関連を統計学的に解析したところ、両者ともEBウイルス感染と有意な相関が認められた。 CD70とCD27の結合の結果、CD27陽性細胞から可溶性CD27が分泌されるとの報告があるため、上咽頭癌患者血清と健常人血清を用いて可溶性CD27値を測定した。その結果、患者血清中に可溶性CD27の発現を認めるとともに、健常人と比較して有意に高値を示した。さらに、組織中のCD70とCD27の両方が陽性の患者群は、それ以外の患者群と比較して血清中の可溶性CD27値が有意に高かった。 続いて、CD70陽性上咽頭癌細胞株を免疫不全マウスに皮下移植して異種移植モデルを作製した。皮下に形成された腫瘍におけるCD70発現を検討したところ、腫瘍の細胞膜に発現を認めた。 以上より、上咽頭癌において、EBウイルスが腫瘍細胞のCD70発現に関与している可能性と、腫瘍細胞がCD70/CD27経路を介して周囲のリンパ球に何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆された。今後は、腫瘍細胞のCD70発現が周囲に浸潤するリンパ球にどのような影響を与えるのか詳細に解析するとともに、CD70に対するヒト化抗体を異種移植マウスに投与して抗腫瘍効果を検討することで、上咽頭癌に対するCD70を標的とした新規治療開発を目指して研究を継続していく予定である。
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