研究課題/領域番号 |
18K09311
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
川嵜 洋平 秋田大学, 医学部附属病院, 講師 (00644072)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | LAT1 / CD98 / 癌幹細胞 / 頭頸部扁平上皮癌 |
研究実績の概要 |
頭頸部扁平上皮癌細胞株のHO-1, Sa3. HSC2. HSC3. HSC4に対して60Gyの外照射を施行した。癌幹細胞マーカーとして、候補にしているCD98hcが高発現している事は確認している。動物実験でも、CD98陽性細胞は腫瘍を形成できたのに対して、CD98hc陰性細胞では腫瘍を形成できなかった。トランスポーターであるxCTとバインドするCD44v9の発現を調べたところ、5つの細胞株で全て100%陽性となった。xCT自体の発現を調べてみたが、興味深いことにフローサイトメトリー上では全く発現がみられなかった。これは、放射線照射によってxCTが通常の形態を保つ事ができなくなっており、フローサイトメーターでは認識できなくなっているのか、何らかの理由で細胞膜に発現できなくなっている可能性が示唆される。CD98はCD98hcとCD98lcが構成されて機能している。CD98lcはLAT1やLAT2などのアミノ酸トランスポーターであり、必須アミノ酸を取り込んで細胞の増殖、維持、分化に寄与している。そこで、癌細胞に特有と言われるLAT1の発現をフローサイトメーターで解析した。5つの細胞株で共通して、LAT1は80-90%の高発現を示した。また、LAT1陽性細胞とLAT1陰性細胞に分離して、癌幹細胞培地を用いた半流動培地上で培養を行ったところ、LAT1陽性細胞はSphereを形成していくのに対して、LAT1陰性細胞はSphereを形成することはできなかった。LAT1阻害剤が新たな抗癌剤として開発されようとしている。本研究では、放射線照射を行う事でLAT1が高発現している事が明らかになった。現在、ニボルマブなどが切除付不能例の癌で使用されているが、LAT1阻害薬が臨床的にこれ以上放射線加療できない症例に対して非常に有効な薬剤になるのではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
5つの細胞株でxCT,CD44v9,LAT1の発現を調べた為、予想以上に時間がかかってしまった。LAT1阻害剤の有効性を調べる為に動物実験を行いたいと考えている。同所移植を行い多発転移モデルを作りたい。しかし、口腔内に腫瘍を作るためマウスが経口摂取できなくなってしまう事が現在の問題である。尾静脈から癌細胞を注射して転移モデルを作るか、臨床に近い状態にするために同所移植を行って転移モデルが作成可能かを検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
放射線照射を施行した細胞株をLAT1陽性細胞とLAT1陰性細胞に分離して、動物に移植する。LAT1阻害剤を投与して、腫瘍縮小の効果を判定する。放射線照射後には約90%以上陽性となるLAT1を阻害できれば、癌の進行を劇的に抑える事ができ、治療法のない切除不能な頭頸部扁平上皮癌の画期的な治療法となる可能性がある。薬剤として開発をすすめていく予定である。また、もう1つのトランスポーターであるxCTがフローサイトメーターで認識できない理由を解明する。本当に細胞膜に発現できていないのであれば、放射線照射後には治療のターゲットにはならない可能性があると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の細胞株を使用し、フローサイトメトリー用の抗体の購入が主であったため初年度は大きな額を使わなくてよかった。今後は動物実験に移行するため、前年度の費用も必要となる。
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