研究課題/領域番号 |
18K09314
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
櫻井 大樹 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (10375636)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アレルギー性鼻炎 / 花粉症 / エピゲノム |
研究実績の概要 |
日本国内において特にスギ花粉症の罹患率の高さと生活の質への影響は大きな問題であり、アレルギー性鼻炎の発症機序や寛解機序を解明することは、予防治療や新たな根治治療法の開発に発展できる可能性がある。アレルギー性鼻炎の病態形成にはTh2細胞を中心とした免疫応答が重要な役割を持つと考えられるが、アレルゲンの感作やアレルギー性鼻炎の発症に至る過程、またアレルゲン免疫療法による寛解においてTh2細胞の役割や、その制御機構はまだ良く分かっていない。Th2細胞の変化において、内因性や外因性のエピゲノム制御が大きな役割を持つ可能性が示唆される。しかし、これまでアレルギー性鼻炎患者におけるエピゲノム解析の報告は少なく、特にスギ花粉症患者における解析の報告はほとんどない。本研究はスギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎患者の検体を用いて、これまでに明らかでないアレルギー性鼻炎におけるT細胞のエピゲノム制御機構を解明する研究であり、特にこれまで申請者らが臨床試験の研究から得られた候補遺伝子を含めエピゲノム制御を解析する研究である。今回、本研究において、千葉大学病院に通院され舌下免疫施行を施行している症例を対象に、採血を行い、これまでの臨床研究から治療効果に関連し変動する末梢リンパ球の候補遺伝子の発現をPCRにて検証した。その結果、治療開始前後での変動がいくつかの遺伝子で再現された。現在、この中から遺伝子候補の絞りこみを進めている。同時に、アレルギー性鼻炎の発症者と未発症者、舌下免疫療法施行者の採血サンプルの収集とリンパ球の保存を進めている。検体数が集まったところで、網羅的な末梢血T細胞のエピゲノム解析を進め、とくに候補遺伝子を含めて解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
千葉大学病院に通院され舌下免疫施行を施行している症例を対象に、採血を行い、これまでの臨床研究から治療効果に関連し変動する末梢リンパ球の候補遺伝子の発現をPCRにて検証した。その結果、治療開始前後での変動がいくつかの遺伝子で再現されることを確認した。さらに、エピゲノム解析を行うために、アレルギー性鼻炎の発症者、未発症者、舌下免疫療法施行者に対し、研究参加者の募集・説明を行い、同意の得られた対象者に対し、病歴の確認、特異的IgE検査、採血からリンパ球分画を回収し凍結保存を進めている。エピゲノム解析のサンプルの収集が完了していないためエピゲノム解析に到達しておらず、予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
アレルギー性鼻炎、未発症者、舌下免疫療法施行者より採取し保存した単核球分画より、アレルゲン刺激を行い、T細胞を分離する。各リンパ球のエピゲノム解析(DNAメチル化、ヒストン修飾)、マイクロアレイ・シーケンサーによる遺伝子発現解析、サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13など)の測定を行い、アレルギー性鼻炎発症者と感作陽性未発症者、感作陰性未発症者、舌下免疫療法受療者の間での差異を解析する。上記エピゲノム制御と制御遺伝子の解析から、アレルギー性鼻炎関連候補遺伝子の探索を行う。候補遺伝子の発現をPCRにより検証し、コードするタンパク質の探索と、細胞内、細胞外の発現をフローサイトメトリーにより解析し、各群間での差を比較検討する。また、これまでの臨床試験から舌下免疫療法におけるバイオマーカー候補遺伝子について、さらに検証実験から絞られた遺伝子についてエピゲノム制御の有無について解析を行う。上記候補遺伝子について、遺伝子発現の変化、コードタンパク質のT細胞発現を比較解析する。またT細胞、T細胞サブセットを分離し、細胞活性・機能の違いを解析する。エピゲノム制御の調節酵素を探索し、酵素の添加により細胞機能の変化を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、アレルギー性鼻炎患者、未発症者、および舌下免疫療法施行者の末梢血T細胞のエピゲノム解析を行うために、研究参加者の募集・説明を行い、同意の得られた対象者に対し、採血から末梢リンパ球を回収し保存を進めている。症例登録、検体の収集が当初の予定より少し遅れているため、エピゲノム解析の開始が遅れており、エピゲノム解析と遺伝子解析のために使用を見込んでいた費用について、次年度に使用する予定となった。検体数が集まり次第、解析に入る予定で現在進めている。
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