人工内耳患者のECAPを測定し、ECAPの日本語聴取成績と関連する因子を解明し達成可能な聴取能を予測することを目的としいる。 本年度は人工内耳手術を行っ た47耳より新規のデータを取得した。ECAPによるAI予後解析について症例を追加して15歳以下の小児124耳について再度解析した。 まず術中NRTの閾値と術後の閾値レベルの相関を検討した。続いて、手術時年齢、難聴原因、電極、電極挿入方法、術前ECAPを説明変数とし、初回音入れ時および術後6ヶ月後のマッピング条件を目的変数とし、機械学習により予測を行った。予測アルゴリズムはラッソ回帰、ランダムフォレスト、ニューラルネットワークを用いた。尚、術後6か月後の解析には初回音入れ時のマッピング条件も説明変数として追加した。それぞれのモデルにおける予測精度をMean percent errorを用いて検討した。術前ECAPと術後の閾値レベルの相関は頂回転の方が基底回転に比べて高かった。電極の違いによって相関も異なっていることが分かった。機械学習による閾値の予測については、術直後の閾値を予測した場合ラッソ解析がMPE11.1 %と最も高く、術後6か月の閾値についてはランダムフォレストモデルがMPE9.6 %と最も高くなった。また、ECAPとの相関が低かった基底回転部分についても機械学習を用いることでその予測精度を向上させることができ、ECAPのデータに加えて電極、手術年齢など様々な因子を加味した機械学習は術後の閾値を予測する有用なツールであることが示された。これらを第32回日本耳科学会で報告し、現在投稿中である。
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