研究課題/領域番号 |
18K09317
|
研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
小河 孝夫 滋賀医科大学, 医学部, 非常勤講師 (90549908)
|
研究分担者 |
清水 志乃 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (50505592)
中多 祐介 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80794958)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | HMGB1 / Calprotectin / IL-33 / 好酸球性副鼻腔炎 / アレルギー性鼻炎 / IL-25 / スギ花粉症 / 慢性副鼻腔炎 |
研究実績の概要 |
アラーミンの一つである、HMGB1とCalprotectin(S100A8/A9)、IL-33 について検討を進めた。 (1)HMGB1はアレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎鼻汁中に高濃度に存在し、その刺激は、RAGE受容体を介して培養鼻粘膜上皮細胞からのIL-8,IL-6の産生とmRNA発現を引き起こした。また、TNF-alpha刺激によって、培養鼻粘膜上皮細胞からのHMGB1産生とmRNA発現が増強された。 (2)ダニ抗原やアルテリナリア刺激、黄色ブドウ球菌由来プロテアーゼなどの刺激により、培養正常気管支上皮細胞からのCalprotectin産生とmRNA発現が増加した。Calprotectinは、その受容体であるTLR4とRAGEを介して、ATPとの共刺激で、培養正常気管支細胞からのIL-25,TSLP産生とmRNA発現を増強させ、さらにアルテリナリア刺激によるIL-25,TSLP産生とmRNA発現も増強させた。こうした刺激によって培養鼻粘膜上皮細胞から産生されるCalprotectin量は、好酸球性副鼻腔炎由来の培養上皮細胞で、有意に増加していた。 (3)IL-33遺伝子を導入したヒト気道上皮細胞では、ダニ抗原刺激でIL-33が産生された。ダニ抗原刺激による細胞上清で好塩基球株KU812細胞を刺激するとIL-5が産生されたが、この反応は抗IL-33抗体や抗ST2受容体抗体で消失した。つまりダニ抗原刺激で上皮細胞から放出されたIL-33が好塩基球に作用してIL-5産生に作用することが明らかになった。 以上の結果から、さまざまな炎症刺激によって、鼻粘膜上皮細胞からアラーミンである、HMGB1やClaprotectin(S100A8/A9)、IL-33が産生され、こうしたアラーミンが 鼻副鼻腔炎における炎症反応の進展に関わっていると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鼻粘膜上皮細胞や気道上皮細胞からのアラーミン(HMGB1, Calprotectin, IL-33)分泌とその作用機序、慢性副鼻腔炎や好酸球性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎における役割について検討が着実に進められている。現在はIL-33と同様に気道上皮細胞から分泌されるIL-25とその放出機序について、スギ花粉症やダニによるアレルギー性鼻炎における作用機序を中心に検討を進めている。さらに、好酸球性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎におけるIL-33・IL-25産生とその役割、さらにその細胞内分子機序について、IL-18とともにNADPHオキシダーゼと酸化ストレスの役割についても検討を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)スギ花粉症における、気道上皮細胞から放出されるIL-25とその細胞内分子機序について検討を進める。スギ花粉には腫瘍抗原であるCry j 1, Cry j 2とともに、セリンプロテアーゼやアスパルテートプロテアーゼ、NADPHプロテアーゼ、エイコサノイドが含まれているが、こうしたプロテアーゼ活性や酸化ストレスなどの影響を明らかする。 (2)気道上皮細胞からのIL-33・IL-25分泌には、IL-18とともにNADPHオキシダーゼを介した酸化ストレスが関わっている可能性がある。培養気道上皮細胞と慢性点鼻抗原刺激で作成した、好酸球性副鼻腔炎類似の慢性好酸球性炎症のマウスモデルを利用して、こうした作用機序を解明する予定である。
|