本年度は、最終年度として、これまでの実験計画の継続並びに研究のまとめを行った。実験動物を用いた研究では、C57BL6マウスを使用した加齢による体平衡機能の変化についてまとめた。その結果、体平衡機能の異常は月齢9か月頃より始まり、12か月で約50%が棒つかみなどの異常などを生じこの割合は徐々に増加し、24か月ではほぼすべての動物に体平衡障害を生じることが明らかになった。さらに、この時期になると半数以上に行動異常(回転、不動など)が生じていた。寿命に関しては24~30か月、平均26.8か月であった。加齢に関与する蛋白のメラトニン、メラトニン受容体での内耳での局在については、メラトニン、メラトニン受容体が内耳(感覚細胞、神経、神経節細胞、水分移行上皮、内リンパ嚢)に広範囲に分布し、感覚細胞の興奮伝達機構、水分輸送機能に満好、内耳の障害軽減作用も有することを明らかにした。このメラトニンについては平衡障害が始まる14か月のマウスでは特に蝸牛で減少するが前庭ではほぼ変化がないことが明らかとなった。 人を用いた研究ではこれまでの正常成人を対象にしたものからめまい患者を対象にして白色雑音負荷による体平衡機能の変化を重心動揺を指標に検討した。その結果、めまい患者では正常者よりも顕著に白色雑音による重心動揺の改善が認められること、この作用は、高齢者、心因がめまいに関与するもので特に顕著に現れることが明らかとなった。また、重心動揺の改善が顕著なものでは、足踏み試験でも改善が認められた。これらの結果から、白色雑音負荷がこれまで有効な治療に乏しい加齢性平衡障害や心因性めまいの治療に応用できる可能性が出てきた。これらの結果は第79回日本めまい平衡医学会、第28回和歌山めまいフォーラムにて発表された。
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