研究課題
我々の研究から見出された細胞傷害活性を有する特殊なCD4+CD8+ Tfh細胞のIgG4関連疾患(IgG4-RD)における役割を明らかにするために、IgG4-RD患者由来の末梢血や病変組織の解析を行っている。これまでに、IgG4-RDの顎下腺組織から安定してCD4+CD8+ Tfh細胞を単離する系を確立した。興味深いことに、このCD4+CD8+ Tfh細胞は小児の口蓋扁桃組織にも多く存在することを発見し、安定して単離する系も確立することができた。これにより、口蓋扁桃由来のCD4+CD8+ Tfh細胞をコントロールとして、IgG4-RD患者由来の病変部位に存在するCD4+CD8+ Tfh細胞の機能解析(抗体産生誘導能、細胞傷害能)を現在行っている。さらにIgG4-RDの病態におけるCD4+CD8+ Tfh細胞を解析していく中で、我々はIgG4-RD患者の末梢血中には健常者と比較して、CD4陽性T細胞サブセットの1つである末梢ヘルパーT (Tph) 細胞が多く存在すること(Rheumatol Adv Prac 2018)、さらにTph細胞はフラクタルカイン受容体、グランザイム、パーフォリンを高発現し、フラクタルカインの刺激によって細胞傷害性ヘルパーT細胞(CD4+ CTL)として機能することを発見した(投稿準備中)。IgG4-RDではTph細胞(PD-1+CXCR5-)とTfh細胞(PD-1+CXCR5+)が協調して線維性慢性炎症の病態形成に関与していると考えられる(Curr Opin Rheumatol 2019)。加えてTph細胞のT細胞抗原受容体(TCR)レパトアを検討したところ、IgG4-RD由来のTph細胞のTCRレパトアは健常者と比較して多様性が著しく低く、何らかの特異抗原に対するメモリーT細胞である可能性が非常に高いと考えられた(投稿準備中)。
2: おおむね順調に進展している
IgG4-RD患者由来の病変部位に存在するCD4+CD8+ Tfh細胞の機能解析(抗体産生誘導能、細胞傷害能)が進行中であり、次年度中には口蓋扁桃由来のCD4+CD8+ Tfh細胞をコントロールとしたIgG4-RD患者由来のCD4+CD8+ Tfh細胞の機能解析の結果が出ることが期待できる。また、CD4+CD8+ Tfh細胞の機能解析の過程で新たにTph細胞のIgG4-RDの病態への関与が発見され、これまでに総説や原著論文による報告、学会での報告が順調に行われている。
1. CD4+CD8+ Tfh細胞の機能の検討:手術で得られたIgG4-DS患者の顎下腺組織からリンパ球を分離し、CD4+CD8+ Tfh細胞を単離、機能解析としてLDH assay、さらにはCalcein-AMを導入したヒト初代培養顎下腺導管上皮細胞を用いて、cytotoxicity assayを行い、細胞傷害能を比較検討する。さらには、同様の系またはB細胞との共培養の系でT細胞の活性化分子であるICOSやPD-1の中和抗体やIL-4、IL-21抗体、Tfh細胞の分化を抑制することが知られているIL-2やBCL6阻害剤の添加に伴う細胞傷害能や抗体産生の変化を検討する。2. CD4+CD8+ Tfh細胞の分化誘導機構の解明:IgG4-DSの顎下腺局所由来のCD4+CD8+ Tfh細胞とnon CD4+CD8+ Tfh細胞をセルソーターで単離してDNAマイクロアレイで遺伝子プロファイリングの比較し、CD4+CD8+ Tfh細胞の表面マーカーやマスターレギュレーターの検索を行う。バリデーションを行い、候補となる分子が発見された場合にはヒトナイーブT細胞またはnon CD4+CD8+ Tfh細胞に遺伝子導入を行い、CD4+CD8+ Tfh細胞への分化誘導が起こるかどうかを検討する。3. 動物モデルを用いた、CD4+CD8+ Tfh細胞によるIgG4-RDの病態形成のメカニズムの検討:IgG4-RDモデルマウス(LatY136F変異マウス)を用いたin vivoの系で、病変部位からTfh細胞をセルソーターで単離した後、T細胞欠損マウスに移入して各臓器にIgG4-RD類似の病変が形成されるかを観察する。さらにはIL-2やBCL6阻害剤など既知のTfh細胞の分化を抑制する薬剤の投与によってそれらの病変が改善するかを観察する。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うちオープンアクセス 3件、 査読あり 9件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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