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2019 年度 実施状況報告書

細胞傷害性Tfh細胞を標的としたIgG4関連疾患の新規治療戦略

研究課題

研究課題/領域番号 18K09323
研究機関札幌医科大学

研究代表者

亀倉 隆太  札幌医科大学, 医学部, 講師 (70404697)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードIgG4関連疾患 / 細胞傷害性Tfh細胞 / Tfh細胞 / IgG4関連涙腺・唾液腺炎 / Tph細胞
研究実績の概要

1. IgG4関連疾患(IgG4-RD)の顎下腺組織から安定してCD4+CD8+ Tfh細胞を単離する系を確立した。IgG4-RDは症例数が少ないため、顎下腺組織が安定して手に入らないという問題点があったが、このCD4+CD8+ Tfh細胞が小児の口蓋扁桃に多く存在することを発見した。IgG4-RDの顎下腺組織由来と口蓋扁桃由来のCD4+CD8+ Tfh細胞をそれぞれ単離しDNAマイクロアレイで遺伝子の発現解析を行ったところ、グランザイムやEOMESなどの細胞傷害性T細胞 (CTL)関連遺伝子や活性化マーカーであるMHC class2の発現がIgG4-RDの顎下腺組織由来のCD4+CD8+ Tfh細胞で高く、抗体産生制御に関与するIL-21, CD40L遺伝子の発現は口蓋扁桃由来のCD4+CD8+ Tfh細胞で高いという結果を得た。またB細胞との共培養の系で口蓋扁桃由来のCD4+CD8+ Tfh細胞はCD4+CD8- Tfh細胞と比較してB細胞・形質細胞からのIgG抗体産生をより強く誘導することを発見した。
2. IgG4-RD患者の末梢血中には健常者と比較して、CD4陽性T細胞サブセットの1つである末梢ヘルパーT(Tph)細胞が多く存在すること(Rheumatol Adv Prac 2018)、さらにTph細胞はフラクタルカイン受容体、グランザイム、パーフォリンを高発現し、細胞傷害性ヘルパーT細胞(CD4+ CTL)として機能することを発見し報告した(Mod Rheumatol 2020)。さらにTph細胞のT細胞抗原受容体(TCR)レパトアを検討したところ、IgG4-RD由来のTph細胞のTCRレパトアは健常者と比較して多様性が著しく低く、多様性を示す指数(%Unique reads)と臨床パラメータ(IgG4/IgG)との間に有意な負の相関を認めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

IgG4-RD患者の顎下腺組織由来と小児の口蓋扁桃由来のCD4+CD8+ Tfh細胞の機能解析(抗体産生誘導能、細胞傷害能)が進行中であり、次年度中にはメカニズムを含めたCD4+CD8+ Tfh細胞の機能解析の結果が出揃うことが期待できる。それらの結果をもとに次年度ではCD4+CD8+ Tfh細胞の分化誘導機構の検討や動物モデルを用いた検討を行い、CD4+CD8+ Tfh細胞のIgG4-RDの病態形成における役割を明らかにしていきたい。また、CD4+CD8+ Tfh細胞の機能解析の過程で発見されたTph細胞はIgG4-RDの病態への関与している可能性が高く(Rheumatol Adv Prac 2018, Curr Opin Rheumatol 2019, Mod Rheumatol 2020)、さらにCD4+ CTLと関連した検討が進んでおり、これまでに原著論文や学会での報告が順調に行われている。

今後の研究の推進方策

1. CD4+CD8+ Tfh細胞の機能解析:IgG4-DS患者の顎下腺組織または小児の口蓋扁桃組織からリンパ球を分離し、CD4+CD8+ Tfh細胞をセルソーターで単離、機能解析としてヒト初代培養顎下腺導管上皮細胞、ヒト血管内皮細胞、ヒトB細胞等を用いて、細胞傷害アッセイを行い、細胞傷害能の検討とターゲット細胞を明らかにする。さらには、同様の系またはB細胞との共培養の系でCD4+CD8+ Tfh細胞にIL-10抗体、IL-21抗体、CD70阻害抗体、Tfh細胞の分化を抑制することが知られているIL-2やBCL6阻害剤の添加に伴う細胞傷害能や抗体産生の変化を検討する。
2. CD4+CD8+ Tfh細胞の分化誘導機構の解明:IgG4-RDはその背景に慢性炎症が存在することから、マウスに慢性炎症を誘導し(IgG4-RDモデル; ラミニン 511 抗原皮下注、肺線維症モデル; ブレオマイシン誘発など)、CD4+CD8+ Tfh細胞が誘導されるかを検討する。誘導された場合にはCD4+CD8+ Tfh細胞をセルソーターで単離してDNAマイクロアレイで遺伝子プロファイリングの比較し、CD4+CD8+ Tfh細胞の表面マーカーやマスターレギュレーターの検索を行う。
3. 動物モデルを用いたCD4+CD8+ Tfh細胞によるIgG4-RDの病態形成のメカニズムの検討:IgG4-RDモデルマウス(LatY136F変異マウスまたはラミニン 511 抗原皮下注モデル)を用いたin vivoの系で、病変部位からTfh細胞をセルソーターで単離した後、T細胞欠損マウスに移入して各臓器にIgG4-RD類似の病変が形成されるかを観察する。さらにはIL-10抗体、IL-21抗体、CD70阻害抗体やIL-2、BCL6阻害剤などのTfh細胞の分化を抑制する薬剤の投与によってそれらの病変が改善するかを観察する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Cytotoxic Tph-like cells are involved in persistent tissue damage in IgG4-related disease.2020

    • 著者名/発表者名
      Yabe H, Kamekura R, Yamamoto M, Murayama K, Kamiya S, Ikegami I, Shigehara K, Takaki H, Chiba H, Takahashi H, Takano K, Takahashi H, Ichimiya S.
    • 雑誌名

      Mod Rheumatol.

      巻: Feb 5 ページ: 1-12

    • DOI

      10.1080/14397595.2020.1719576.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Activated circulating T follicular helper cells and skewing of T follicular helper 2 cells are down-regulated by treatment including an inhaled corticosteroid in patients with allergic asthma.2020

    • 著者名/発表者名
      Miyajima S, Shigehara K, Kamekura R, Takaki H, Yabe H, Ikegami I, Asai Y, Nishikiori H, Chiba H, Uno E, Takahashi H, Ichimiya S.
    • 雑誌名

      Allergol Int.

      巻: 69 ページ: 66-77

    • DOI

      10.1016/j.alit.2019.08.008.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Aberrant populations of circulating T follicular helper cells and regulatory B cells underlying idiopathic pulmonary fibrosis.2019

    • 著者名/発表者名
      Asai Y, Chiba H, Nishikiori H, Kamekura R, Yabe H, Kondo S, Miyajima S, Shigehara K, Ichimiya S, Takahashi H.
    • 雑誌名

      Respir Res.

      巻: 20 ページ: 244

    • DOI

      10.1186/s12931-019-1216-6.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Bob1 enhances RORγt-mediated IL-17A expression in Th17 cells through interaction with RORγt.2019

    • 著者名/発表者名
      Ikegami I, Takaki H, Kamiya S, Kamekura R, Ichimiya S.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun.

      巻: 514 ページ: 1167-1171

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2019.05.057.

    • 査読あり
  • [学会発表] オリゴクローナルな血液Tph細胞の増加がIgG4関連疾患の病態形成に関与する.2019

    • 著者名/発表者名
      亀倉隆太, 矢部勇人, 山本元久, 高橋裕樹, 高野賢一, 一宮慎吾.
    • 学会等名
      第47回日本臨床免疫学会総会
  • [学会発表] IgG4関連疾患の病態形成にオリゴクローナルな血液Tph細胞の増加が関与する.2019

    • 著者名/発表者名
      亀倉隆太, 矢部勇人, 山本元久, 高橋裕樹, 高野賢一, 一宮慎吾.
    • 学会等名
      第28回日本シェーグレン症候群学会学術集会
  • [学会発表] シンポジウム13 生体バリア機構とアレルギー疾患. アレルギー性鼻炎に関連するエピイムノ―ムの新機能.2019

    • 著者名/発表者名
      亀倉隆太, 矢部勇人, 重原克則, 高野賢一, 一宮慎吾.
    • 学会等名
      第68回日本アレルギー学会学術大会
    • 招待講演
  • [備考] 札幌医科大学医学部フロンティア医学研究所〔免疫制御医学部門〕ホームページ

    • URL

      https://web.sapmed.ac.jp/immunology/

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公開日: 2021-01-27  

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