研究課題/領域番号 |
18K09325
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
安田 誠 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60433273)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 鼻粘膜上皮培養細胞 / 線毛運動 / 細胞内クロライド / 細胞内PH / 上下気道 / 細胞内外環境 |
研究実績の概要 |
昨年に引き続き本課題で我々は細胞内外環境の変化に対する応答を線毛細胞に着目して検討を続けることにした。ヒト鼻粘膜培養上皮細胞を作成し、実験を行った。Cl-チャネルアクチベーターであるダイゼインにより細胞内Cl-濃度が低下し、ciliary beat distance(CBD)の増加で示される線毛運動の増加を確認することを昨年の研究成果で報告した。そこで本年度は、同様のヒト鼻粘膜培養細胞を用いて引き続き実験を行った。 細胞外のCl-濃度を強制的に0にして(枯渇させて)、拡散で細胞内のCl-濃度が低下しCBDが増加するがciliary beat frequnecy (CBF)は変わらないことを確認した。次にCFTRなどのCl-チャネルの阻害薬を用いて強制的に細胞内クロライド濃度の増加を引き起こした際の線毛運動の変化を調べた。細胞内Cl-濃度上昇に伴い、CBDに加え、CBFも低下し線毛運動は低下した。これらの結果から、ヒト鼻粘膜上皮線毛細胞においてCBDとCBFのCl-による濃度依存性が異なることが可能性として考えられた。またヒト鼻粘膜培養細胞は細胞外CO2低下させたにも関わらず細胞内PHの上昇はわずかであることがわかり、これは下気道細胞とは異なる結果であった。これは鼻粘膜上皮細胞からCO2産生が下気道上皮細胞より顕著に多いことに起因すると考えられた。また現在実臨床で使用するカルボシステインを培養上皮細胞に作用させると、細胞内Cl-濃度低下を伴うCBD上昇を引き起こすことを確認した。実臨床で使用される薬剤でも線毛運動活性化を引き起こす可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高速度カメラを装着した顕微鏡下に鼻粘膜線毛運動を計測し、通常の線毛運動周波数CBFに加え、線毛運動振幅を評価する指標となるCBF(Ciliary beat frequncy)とCBD (ciliary beatdistance)の測定法を確立した。MQAEを細胞内クロライドのインジケータとして使用し細胞内濃度変化を記録することが可能になった。またヒト鼻粘膜培養細胞系を確立し線毛運動の記録を開始した。実験の進捗により細胞内クロライドが低下することでCBDが増加し線毛運動が増加することを突き止めた。さらにこの反応はCl-チャネルアクチベーターだけでなく既存の実臨床薬にも同様の効果を有する可能性も確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
細胞内クロライドが線毛細胞のどの部分に働き運動調整を行うのか、キナーゼの活性化などにも注目して実験を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予想していた物品費が少なくなった。これは昨年と同様の実験を継続することができ、試薬を新規に購入することが少なかったためである。今年度は昨年までの結果を踏まえ新たな実験に着手する予定であり、物品費が例年以上に要するものと考える。
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