研究課題/領域番号 |
18K09328
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
肥後 隆三郎 順天堂大学, 医学部, 教授 (10301110)
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研究分担者 |
大峡 慎一 順天堂大学, 医学部, 准教授 (20549274)
山内 宏一 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70407047) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | FGFR / 次世代シーケンシング法 / 遺伝子変異 |
研究実績の概要 |
FGFRは、受容体型チロシンキナーゼファミリーに属しているキナーゼで、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4によりFGFRファミリーを構成している。FGFRを介して伝達されるシグナルはMAPK経路やPI3K/AKT経路に流れ、このシグナル伝達は、癌においては、細胞増殖、血管新生、細胞遊走、浸潤、転移などに関わっている。本研究ではFGFR阻害薬のターゲットとなる頭頸部扁平上皮癌に生じたFGFRドライバー遺伝子異常を明らかにすることを目的とし、頭頸部癌臨床検体に対し次世代シーケンシングを用いてFGFR遺伝子の変異に関して研究を進めている。昨年度は中咽頭癌、下咽頭癌において、追加検体を用いて更なる遺伝子解析を試行した。方法は、FFPE切片の残余サンプルから核酸を抽出精製し、抽出精製した核酸よりFGFR遺伝子配列を次世代シーケンシング法による遺伝子解析を用いてFGFR遺伝子の変異を解析している。これまでのデータとして中咽頭癌においてはF G F R3領域、F G F R4領域に1箇所の遺伝子変異、F G F R2領域において2箇所の遺伝子変異が同定された。またS N Pに関してはF G F R1、2、3、4で合わせて30の変異が同定された。下咽頭癌においてはF G F R1領域に1箇所、F G F R2領域に4箇所、F G F R3領域に2箇所、F G F R4領域に3箇所の遺伝子変異が同定され、またF G F R1、2、3、4で合わせて40のS N Pが同定された。本年は3検体(中咽頭癌2検体、そのうち1件においては転移リンパ節)を追加し、特に1症例についてはprimary検体とリンパ節転移検体を比較し、中咽頭癌におけるprimary検体と転移リンパ節においての遺伝子変異の差について現在次世代シーケンシングによる解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は中咽頭癌3検体を追加解析中である。特に1症例についてはprimary検体とリンパ節転移検体における遺伝子変異とS N Pを比較し、中咽頭癌におけるprimary検体と転移リンパ節においての遺伝子変異の差について明らかにすることを目標としている。また中咽頭癌の症例を増やすことで責任遺伝子を追求することを目標2つ目として設定した。本年は喉頭癌の検体を1件追加し解析を行ったが、十分なD N A量を得ることができなかった。これは臨床標本が喉頭全摘後の症例で、病理標本作成の際に脱灰処理が行われたことによる標本の変化が原因であると考えられた。喉頭癌、下咽頭癌において脱灰処理が加わるとWES(Whole Exome Sequencing)による遺伝子変異検索が難しいことが明らかとなった。またコロナ禍において癌患者の受診控えが引き続きあり病院受診数が減ったこと、ならびに研究参加の同意を得ることのできたサンプル数が減少し他ため研究の進捗に遅れがでている。解析についてはサンガー法ではなくWESを用いているため解析自体にもやや時間がかかっており、進捗の遅れの理由としてあげられるところである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの報告からはFGFR1、3での遺伝子変異は頻度が少なく、遺伝子変異に関してはFGFR2にターゲットを絞る必要がありそうだったが、解析からみるとFGFR3の変異はある程度ありそうである。これに対しFGFR1の変異はやはり乏しい印象で、今後のサンプルの解析と合わせ結果の考察が必要となりそうである。追加検体3件の結果を詳細に検討し、Whole Exome Sequencingを用いて更なるFGFR1,2,3,4の変異を一括して解析する予定である。また、遺伝子変異より遺伝子増幅の方が頻度は高いと予想されているので、遺伝子変異よりは遺伝子増幅、特にFGFR1の遺伝子増幅に今後焦点を当てて研究を継続する予定である。研究当初に予定していたFGFR1、FGFR2、FGFR3における遺伝子融合については、追加サンプルの解析を進めた上での追加検討の必要があると考えられる。今後さらにサンプルを増やし、共通する変異を同定する。SNPに関しても同様に共通する変異を明らかとする予定である。また喉頭癌は脱灰の処理で解析に困難があり、舌癌に対し解析を拡大する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍において癌患者の受診控えがあり病院受診数が減ったこと、ならびに研究参加の同意を得ることのできたサンプル数が減少した。今回3件の追加検体を得ることができたが、本年も引き続き研究を継続とし2021年の研究費の一部を2022年度へ移動させることとした。
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