研究実績の概要 |
近年,若年者の間でポータブル・オーディオ機器の一層の普及が進み,騒音性難聴(いわゆるイヤホン難聴)の増加が懸念されている。騒音性難聴の早期発見には,通常の8,000 Hzまでの聴力検査に加え,さらに高い周波数(9,000-16,000 Hz)で測定する「拡張高周波聴力検査(extended high-frequency audiometry)」が適用されてきた。しかし,騒音性難聴に対するその検査の有効性評価は,研究によって必ずしも一致していない。その原因は,拡張高周波聴力検査用オージオメータに起因する測定上の欠陥(被検者の誤反応を誘発するノイズの発生)にあると考えられる。そこで本研究では,この問題を回避する,新たな聴力測定法の提案を第一の目標として計画した。 平成30年度(初年度)は,この新しい測定方法の開発を行い,若年健聴者を対象として,拡張高周波領域の聴覚閾値が,通常の聴力検査と同程度に安定的に測定できることを確認することとした。まず,拡張高周波聴力測定の装置校正システム及び測定実施システムの構築を行った。その結果,構想段階で計画したシステムの構成で,目的の拡張高周波聴力検査が実行可能であることが確認できた。続いて若年健聴者を対象に予備測定を行う予定であったが,計画の遅れから,平成30年度中に実施まで至ることができなかった。研究内容自体に大きな変更は無いため,平成31年度(2年目)に予備測定を行い,新しい測定方法の実効性を確認することとする。
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